汚泥とは?産業廃棄物に占める割合や種類・正しい処分方法を詳しく解説
事業活動によって発生した汚泥は、産業廃棄物として処理する必要があります。産業廃棄物とは法令で定められた20種類を指し、通常の事業ごみとは異なるため正しく処理することが重要です。
本記事では、汚泥の種類や処理方法を解説します。また、産業廃棄物全体に占める汚泥の割合についても紹介するのでぜひ参考にしてください。
産業廃棄物として処理される汚泥とは?
汚泥とは、事業活動によって生じた排水の処理過程などで発生する泥状の廃棄物のことです。前述したように、汚泥は産業廃棄物にあたります。産業廃棄物は業者に依頼するなど、適切に処理することが必要です。適切な処理を怠った場合、罰金刑や懲役刑に課せられる可能性があるため注意しましょう。
汚泥には、工場排水などの処理後に残る泥のようなもの、製造の工程によって生じる泥状のようなものがあります。汚泥の中でも重金属を含んでいるものや有毒なものについては、特別管理産業廃棄物に分類されるケースがあり、その取り扱いには注意が必要です。汚泥の具体的な種類についてはこの後、詳しく解説します。
汚泥の種類
汚泥には様々な種類がありますが、大きく分けると有機汚泥と無機汚泥の2種類があります。ここでは、それぞれの汚泥について具体的に解説します。
有機性汚泥
有機汚泥は、主に下水処理場や生産工場、動物の飼育場などから発生する汚泥です。具体的には以下のものが挙げられます。
・ビルピット汚泥(し尿を含むもの以外)
・パルプ廃液から生じる汚泥
・動植物性原料を使用する各種製造業の廃水処理後に生ずる汚泥
・活性汚泥法による処理後の汚泥
また、有機汚泥の性状とその対象排水は以下の3つに分類されます。
・生活排水の活性汚泥:下水、し尿
・食品工場の活性汚泥:食品排水
・有機化学物質の活性汚泥:有機化学プロセス排水、石油化学プロセス排水
有機性汚泥は適切な処理を行えば再資源化が可能です。しかし含まれる成分によって処理方法は大きく異なるため、正確に分別する必要があります。
無機性汚泥
無機汚泥は、主に土木工事現場や金属工場などで行われる掘削工事などから生じる汚泥です。、無機汚泥の代表例には、以下のものが挙げられます。
・腐白土
・けい藻土かす
・炭酸カルシウムかす
・赤泥
・浄水場の沈殿池から生じる汚泥
また、無機汚泥の性状とその対象排水は以下の5つに分類されます。
・石炭、石灰、石膏など:鉱石の洗浄排水、集積排水
・酸化金属粉末:鉄鋼排水、集塵排水
・重金属水酸化物:酸排水、メッキ排水
・含油凝集汚泥:機械工場排水、冷延排水
・凝集汚泥:懸濁水処理
汚泥の種類は多いため分類に困るケースもあるでしょう。分類がわからない場合は、行政に相談してみると安心です。
産業廃棄物に占める汚泥の割合は?
合計20種類ある産業廃棄物の中で汚泥が占める割合はどのくらいなのでしょうか。
環境省が平成29年度に発表した産業廃棄物の処理状況によると、汚泥は、産業廃棄物全体の44.5%を占めており、最も高い排出割合となっています。排出割合で1〜3位に入っている産業廃棄物の内訳(平成29年度)は以下の表のとおりです。
|
産業廃棄物の種別 |
割合 |
排出量 |
1位 |
汚泥 |
44.5% |
1億7069万トン |
2位 |
動物の糞尿 |
20.3% |
7789万トン |
3位 |
がれき類 |
15.6% |
5977万トン |
これらの上位3品目だけで、総排出量の80%以上を占めていることがわかります。また4位以降は、ばいじん、鉱さい、金属くず、となっています。
出典:環境省「産業廃棄物の排出及び処理状況等(平成29年度実績)について」(参照:2022-02-15)
汚泥の処分方法
汚泥の代表的な処分方法は主に8種類です。処分する際は汚泥の種類や性質に合わせて行う必要があります。ここでは代表的な処分方法について解説します。
・セメント原料化
上下水処理場や発電所など様々な業種で生じた廃棄物を、セメント原燃料として再利用します。回収された廃棄物全てがリサイクルに用いられるため無駄がありません。
・焼却
焼却は汚泥の減量化を実現できる方法です。焼却時の熱を発電に活用したり、温水利用などを行ったりするケースもあります。また、焼却の際は、燃え殻やばいじんなど二次廃棄物が生じる可能性もあります。焼却によって生じた二次廃棄物の処理方法についても確認が必要です。
・埋め立て
リサイクルや減量化ができない廃棄物は埋め立てにより処分されます。処分場には「安定型処分場」「遮断型処分場」「管理型処分場」の3種類があり、廃棄物の種類や性質によって出すべき場所が異なるため注意が必要です。
・造粒固化
造粒固化は、建設現場で生じる浚せつ汚泥や燃え殻といった無機汚泥を混ぜ合わせ、薬剤や機械を使用して固めることで、骨材などとして再利用する処分方法です。
・溶融
廃棄物を溶融温度を超えて加熱することで、減容化するとともに含有成分の抽出・無害化を行います。
・油水分離
鉱物潤滑油系汚泥に加熱や遠心分離を施すことで、油分と水分への分離を行います。油分は再生重油としてリサイクルされることもあります。
・堆肥化
食品工場や下水処理場などから発生する有機汚泥を発酵させ、堆肥原料として再利用する処分方法です。
・メタン発酵
有機汚泥をメタン発酵させ、その過程で生じたメタンガスを発電に利用します。また残渣を堆肥原料として再利用する処分方法です。
まとめ
産業廃棄物の中でも4割以上と最も多くの割合を占めている汚泥は、様々な場面で発生します。性質によって処理方法も異なりますが、汚泥の種類によっては、セメント原料や重油、堆肥原料など様々な形でのリサイクルが可能です。
また、汚泥を含む産業廃棄物の処理には罰則があります。正しい分別や処分方法を行いましょう。
この記事を書いた人

山本 智也代表取締役
資格:京都3Rカウンセラー・廃棄物処理施設技術管理者
廃棄物の収集運搬や選別、営業、経営戦略室を経て代表取締役に就任。
不確実で複雑な業界だからこそ、わかりやすくをモットーにあなたのお役に立てる情報をお届けします。