看護師が知っておくべき医療廃棄物の分別とは
目次
病院などの看護の現場では、医療廃棄物の分別を正しく理解していることが求められます。看護師の方で、医療廃棄物はどのように分別すればよいのかと悩んでいる方や、分別方法を知りたいと考えている方もいるでしょう。
そこでこの記事では、医療廃棄物の概要や分別方法について解説します。お役立てください。
そもそも医療廃棄物とは
医療廃棄物とは、病院などの医療機関等で医療行為によって排出された廃棄物のことです。看護の現場における医療廃棄物は、患者の血液や体液が付着した医療器材などの産業廃棄物と、それ以外の一般廃棄物の2つに分けられます。
この産業廃棄物は病原体による感染の恐れがあるので、特別な方法で処分する必要があります。
看護現場の産業廃棄物の例
看護現場の産業廃棄物には次のようなものがあります。
・血液
・血液や体液が付着したもの
・金属製機械器具
・金属製ベッド
・レントゲン現像廃液
・アルコール
・天然ゴムの器具類
・合成樹脂製器具
・ディスポーザブル手袋
・アンプル
・ガラス製の器具
・ギブス用石膏 など
看護現場の一般廃棄物の例
看護現場の一般廃棄物には次のようなものがあります。
・紙くず類
・ディスポ―ザブル製品の入っていた袋や箱
・厨芥
・木くず
・血液が付着していない包帯
・ガーゼ
・脱脂綿
・リネン類
・皮革類
・実験動物の死体 など
産業廃棄物の中には感染性廃棄物が含まれる
医療機関等から排出される産業廃棄物には、人に感染する恐れのある感染性廃棄物が含まれています。
感染性廃棄物とは
医療廃棄物は感染性廃棄物と非感染性廃棄物に分けられます。感染性廃棄物とは医療関係機関等から生じ、病原体により人が感染する恐れのある廃棄物のことで、さらに感染性一般廃棄物と感染性産業廃棄物に分けられます。
感染性廃棄物が発生する医療関係機関等としては、病院、診療所、衛生検査所、介護老人保健施設、介護病院、助産所、国・自治体の試験研究機関、大学とその付属試験研究機関などの施設が該当します。
感染性廃棄物を見極める方法
医療廃棄物が感染性廃棄物かどうかを見極める方法は、環境省が作成した感染性廃棄物の判断フローによって判断します。
ステップ1は、廃棄物の形状の確認です。血液や体液、臓器や皮膚、血液が付着した鋭利なものに該当すれば感染性廃棄物になります。
それ以外の廃棄物は、ステップ2の排出場所で判断します。感染症病床、結核病床、手術室などで使用されたものは、感染性廃棄物となるため特別な処理が必要です。
残された廃棄物は、ステップ3の感染症の種類を確認します。感染症法一類・二類・三類感染症などの治療や検査に使用されたものなどは感染性廃棄物となります。
これらの3つのステップのどれにも該当しない廃棄物は、非感染性廃棄物として扱うのが看護現場で実際に行われている感染性廃棄物の見極め方です。
看護現場による医療廃棄物の分別方法

看護現場での医療廃棄物の分別方法は、まず一般廃棄物と産業廃棄物に分別します。産業廃棄物はさらに感染性廃棄物と非感染性廃棄物に分け、感染性廃棄物はバイオハザードマークの色分けに従って分別しなければいけません。
一般廃棄物の分別方法
一般廃棄物は産業廃棄物と区分して、市町村のルールに従って市町村の処理施設に搬入します。
医療機関で出る一般廃棄物は事業系一般廃棄物となるので、家庭ごみ収集には出せません。多くの市町村では資源物と燃えるごみに分別したうえで、市町村の施設に搬入するルールになっています。
産業廃棄物の分別方法
産業廃棄物は3種類の感染性廃棄物と、非感染性廃棄物に分別します。
感染性廃棄物(黄)
感染性廃棄物のうち、注射針やメス、割れたガラスなど鋭利なものは、金属製あるいはプラスチック製の貫通しない堅牢な容器に密閉して保管します。容器には黄色のバイオハザードマークを貼ります。
保管場所は建屋内の設け、温度や臭気、清掃などの管理を徹底しなければいけません。周囲に囲いを設けて見やすい場所に、「感染性廃棄物の保管場所であること」「関係者以外立ち入り禁止であること」「許可なく容器の持ち出し禁止等」の注意を、縦横60cm以上の大きさで表示します。
感染性廃棄物(橙)
感染性廃棄物のうち、血液が付着したガーゼや繊維くず・紙くずなどの固形状のものは、丈夫なプラスチック袋を二重にして使用するか、堅牢な容器に保管します。容器には橙色のバイオハザードマークを貼って、関係者が感染性廃棄物であることを識別できるようにしましょう。
保管場所は建屋内の設け、温度や臭気、清掃などの管理を十分に行うとともに、ネズミの生息や、蚊やハエが発生しないようにする必要があります。周囲に囲いをして、感染性廃棄物の保管場所を示す縦横それぞれ60cm以上の掲示板を設置してください。
掲示板には、保管する廃棄物の種類、管理者の氏名、連絡先を明記します。関係者以外の立入禁止、許可なくして梱包容器の持ち出し禁止、梱包容器は慎重に取扱う、などの注意も忘れずに記載しましょう。
非感染性廃棄物
紙おむつや生理用ナプキン、検尿コップ、感染性廃棄物を消毒処理したものなどが非感染性廃棄物に該当するものです。
バイオハザードマークは必要ありませんが、外見上感染性廃棄物と見間違う恐れがあります。そのため、非感染性廃棄物であることを明記したラベルを貼ることが推奨されています。
ラベルの大きさは文字が見やすいようにできるよう関係者間で決めますが、一部自治体では、非感染性廃棄物ラベルを指定しているところもあるので、市町村に確認してください。
例えば東京23区では、縦55㎜、横70㎜の大きさのラベルが使われています。
まとめ
医療廃棄物とは、医療関係機関等で医療行為に伴って排出される廃棄物です。看護現場での医療廃棄物は、一般廃棄物と産業廃棄物に分けられます。このうち、一般廃棄物は産業廃棄物と分別し、市町村指定のルールに則って処分しなければなりません。
産業廃棄物の場合は、感染性廃棄物と非感染性廃棄物に分けます。その上で感染性廃棄物に該当するか、判断しなければいけません。この判断は、環境省が作成する感染性廃棄物の判断フローによって行います。
判別された感染性廃棄物は、関係者が識別できるようにバイオハザードマークをつけた容器で保管しましょう。その処理・処分を自分で行わない場合は、感染性廃棄物の処理の許可を持った産業廃棄物処理業者に処理・処分を委託してください。