コロナ禍で増加する医療廃棄物の現状について
目次
コロナ禍で廃棄物が増えている
新型コロナウイルス感染症の流行拡大に伴い、テレワークの推奨や飲食店の営業自粛など、ビジネススタイルやライフスタイルが大きく変化しました。結果として、廃棄物の増加が起こっています。
埼玉県や大阪府大阪市では、令和元年よりも令和2年の事務系ごみが減少し、生活系ごみの量が増加しています。テレワークの推奨により、在宅勤務が増えたことも原因の1つです。※
※埼玉県. 「令和2年3月、4月における県内の一般廃棄物(ごみ)の排出状況について~ごみの減量化に御協力ください~」. https://www.pref.saitama.lg.jp/a0001/news/page/2020/0630-02.html, (参照 2021-10-12)
大阪市. 「令和2年度のごみ処理量 ~2Rを優先したライフスタイルへの転換を~」. https://www.city.osaka.lg.jp/kankyo/page/0000543006.html, (最終更新日 2021-09-08)
治療のために医療廃棄物も増加している
新型コロナウイルス感染症対策のため、医療機関から排出される医療廃棄物も増加しています。
検査キットやワクチン接種によるシリンジ・注射針の使用量が増え、医療廃棄物の増加につながりました。感染防止対策上、日本はもともとディスポーザブル製品が推奨されていたため、現段階で大幅な増加はありませんが、今後も医療廃棄物の増加が続くことが懸念されます。
コロナに関わる医療廃棄物とは?
新型コロナウイルス感染症に関わる医療廃棄物とは、新型コロナウイルス感染症の診断・治療・検査などに使用された医療器材・衛生材料・紙おむつ・し尿などのことです。新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種に関与する廃棄物も、医療廃棄物に入ります。
また、新型コロナウイルス感染症の患者に使用した気管チューブ・カフ・点滴セット・カテーテルなども、新型コロナウイルスに関わる医療廃棄物です。使用する医療器材が多い入院中の重症患者ほど、排出される医療廃棄物が多くなる傾向にあります。
ただし、患者が利用している宿泊施設で排出された通常の廃棄物は、医療廃棄物にはあたりません
感染性廃棄物に分類されるもの
医療廃棄物は、大きく感染性廃棄物と非感染性廃棄物に分類されます。
感染性廃棄物とは、病院・診療所など医療関係機関等から発生した感染性病原体が含まれる、もしくは含まれる恐れのある廃棄物です。非感染性廃棄物は感染性のない廃棄物で、一般的な産業廃棄物と同等に扱われます。
新型コロナウイルス感染症に関わる医療廃棄物も、感染性廃棄物に分類されるものがあるため、判断基準を理解しておくことが重要です。感染性廃棄物は、形状・排出場所・感染症の種類から判断されます。
形状の観点
感染性廃棄物の判断基準の1つは、廃棄物の形状です。主に次の観点から、感染性廃棄物と判断します。
- 血液・精液を含む体液
- 血液等が付着した鋭利なもの
- 手術で排出される臓器・組織・皮膚
- 病原微生物に関連する検査に用いられたもの
人間の血液・体液が付着したものや鋭利なもの、血液・臓器そのものは感染性廃棄物です。
排出場所の観点
廃棄物の排出された場所によっても、感染性廃棄物と判断される場合があります。感染性廃棄物と判断される排出場所は、次のとおりです。
- 病院
- 診療所
- 衛生検査所
- 介護老人保健施設
- その他環境省令で定められた次の場所、助産所・動物業院・試験研究機関など
新型コロナウイルス感染症に関わる医療廃棄物が排出されるのは、主に病院・診療所・衛生検査所・介護老人保健施設です。ただし、ワクチン接種に関わる医療廃棄物も対象となるため、大規模接種会場でも例外的に感染性廃棄物が排出される可能性もあります。
感染症の種類の観点
感染性廃棄物かどうかは、感染症の種類でも判断されます。感染性廃棄物と判断される感染症の種類と該当廃棄物は、次のとおりです。
感染症法の分類 |
該当廃棄物 |
一類~三類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、新感染症 |
治療や検査などに使用された廃棄物 |
四類・五類感染症 |
治療や検査などに使用された医療器材・ディスポーザブル製品・衛生材料など |
新型コロナウイルス感染症は、新型インフルエンザ等感染症に分類されるため、治療・検査などに使用された後の廃棄物が感染性廃棄物として取り扱われます。
コロナによる医療廃棄物の取扱い
環境省によると、新型コロナウイルスに関わる廃棄物は、他の感染性廃棄物と同様に処分可能としています。
新型コロナウイルスに関わる廃棄物を区別すると、排出事業者の負担が増え、医療業務に影響を及ぼす恐れがあるからです。そのため、新型コロナウイルスに関わるからといって、特別な処分は必要ありません。
ここからは、新型コロナウイルスに関わる医療廃棄物の取扱いを説明します。
保管方法
医療廃棄物の保管は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)第12条第2項に定められています。
事業者は、その産業廃棄物が運搬されるまでの間、環境省令で定める技術上の基準(以下「産業廃棄物保管基準」という。)に従い、生活環境の保全上支障のないようにこれを保管しなければならない。 |
e-GOV. 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律第12項第2項」. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=345AC0000000137, (引用 2021-10-12)
環境省によると、新型コロナウイルスに関わる医療廃棄物は、次の条件の下で保管する必要があります。
- 運搬までの間の保管は極力短期間とする
- 保管場所には関係者以外が立ち入れないように配慮する
- 他の廃棄物と区別して保管する
- 保管場所には関係者の見やすい場所に感染性廃棄物の存在・注意事項を表示する
梱包方法
新型コロナウイルスに関わる医療廃棄物は、形状に適した容器に梱包する必要があります。医療廃棄物の形状による梱包方法は、次のとおりです。
医療廃棄物の形状 |
適した梱包方法 |
液状・泥状のもの(血液・体液など) |
漏洩しない密閉容器 |
鋭利なもの(注射針・メスなど) |
耐貫通性のある堅牢な容器 |
固形状のもの(血液の付いたガーゼ・シリンジなど) |
二重にしたプラスチック製の袋、または堅牢な容器 |
バイオハザードマークの表示方法
梱包して保管する医療廃棄物には、関係者が感染性廃棄物であることを判別できるように、バイオハザードマークの表示が必要です。バイオハザードマークには、赤・橙・黄色の3種類があり、それぞれ中身の形状を示しています。
- 赤:液状・泥状のもの
- 橙:固形状のもの
- 黄:鋭利なもの
医療廃棄物処分時の感染防止策
新型コロナウイルスに関わる感染性廃棄物を含め、医療廃棄物を処分する際は、排出事業者あるいは処理業者が適切に処理しなくてはなりません。処理業者に処理を委託した場合でも、最終的に処分されるまでは排出事業者が責任を負います。
医療関係機関等は、環境省が提示した「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」に沿って、感染防止策の対応を行う必要があります。
また、処理業者は「廃棄物に関する新型コロナウイルス感染症対策ガイドライン」に則った対応が必要です。例えば、新型コロナウイルスが付着しているおそれのある廃棄物の収集運搬中は、手洗いや手指消毒せずに自分の目・口・鼻の粘膜に触れないように注意します。
まとめ
新型コロナウイルス感染症の流行により、ビジネススタイルやライフスタイルが変化したことで、廃棄物が増加しています。医療器材・衛生材料・紙おむつ・し尿などが、新型コロナウイルス感染症に関わる医療廃棄物として排出されます。
ただし、新型コロナウイルス感染症の医療廃棄物も、他の感染性廃棄物と同等に処分可能です。
廃棄物処理法に基づいたマニュアルやガイドラインに従って、新型コロナウイルス感染症に関わる医療廃棄物を処理します。
この記事を書いた人

山本 智也代表取締役
資格:京都3Rカウンセラー・廃棄物処理施設技術管理者
廃棄物の収集運搬や選別、営業、経営戦略室を経て代表取締役に就任。
不確実で複雑な業界だからこそ、わかりやすくをモットーにあなたのお役に立てる情報をお届けします。