産業廃棄物排出事業者とは?概要や処理の委託基準・罰則まで詳しく解説
目次
事業所から出た廃棄物は、廃棄物処理法にしたがって適正に処理しなければなりません。適正な手順ではない方法で廃棄物の管理・処分をしてしまうと、排出事業者の責任を問われて罰則が科せられる場合があります。
本記事では産業廃棄物排出事業者について、以下の内容を解説します。
- 産業廃棄物排出事業者とは
- 産業廃棄物の委託基準
- 産業廃棄物排出事業者の義務違反と罰則
廃棄物の処理方法がよくわからないとお悩みの人は、ぜひ最後までお読みください。
産業廃棄物排出事業者とは?概要を説明
産業廃棄物処理法には「事業活動に伴って排出された産業廃棄物は、産業廃棄物排出事業者の責任において処理しなければならない」と定められています。
産業廃棄物排出事業者とは誰を指すのか、またどのような責任があるのかを詳しく見ていきましょう。
産業廃棄物排出事業者とは
産業廃棄物排出事業者とは、事業活動にともなって廃棄物を排出する事業者のことです。
廃棄物処理法には「産業廃棄物排出事業者」が誰か、という明確な規定は存在しません。しかし、同法第3条第1項において「事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない」と定められているため、すべての事業者を指すと解釈されています。
産業廃棄物排出事業者の責任
廃棄物処理法第11条第1項には「事業者は、その産業廃棄物を自ら処理しなければならない」と定められています。また第12条第7項では「事業者は、産業廃棄物の最終処分が終了するまでの一連の処理が適正におこなわれるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない」と明記されています。
これらは、廃棄物処理業者に処理を委託しても処理責任は排出事業者にあることを意味しており、産業廃棄物排出事業者の責任が明文化されたものです。
環境省は産業廃棄物排出事業者の責任を徹底するための取り組みにも力を入れています。排出事業者の責任について理解を深められるように、通知を出したりチェックリストを作成したりして仕組みを整えています。
また、平成29年3月に出された「廃棄物処理に関する排出事業者責任の徹底について(通知)」では、産業廃棄物の処理を委託する場合について「廃棄物処理法において他者の廃棄物を適正に処理することができると認められている者に委託しなければならない」と明記されており、委託時の責任についてもわかりやすくなりました。
▶️環境省 廃棄物処理に関する排出事業者責任の徹底について(通知)
産業廃棄物の処理を委託するときの基準
産業廃棄物の処理を他者に委託する場合は、法に基づき適切に管理・運用しなければなりません。主な注意点は、以下の3つです。
- 適正業者の選定
- 委託契約書の締結
- マニフェストの交付
ひとつずつ見ていきましょう。
適正業者の選定
委託業者を適当に選んでしまうと産業廃棄物の不適切処理につながりかねないため、業者選定は適切におこなうことが大切です。具体的に確認すべき点は、以下の通りです。
- 収集運搬業者を選定する場合
⇒排出場所と運搬先両方の都道府県知事(政令市長)の許可を持っているか - 処分業者を選定する場合
⇒廃棄物を適切に処理できる処理施設を持っているか
廃棄物の種類や量などにともない、適切な処理方法・処理施設での処理ができる許可業者を選定することが大切です。書類のチェックはもちろんのこと、現地調査や処理状況を直接確認するなど、自身の目で適正に処理できる業者かどうかを確かめてから委託しましょう。
委託契約書の締結
産業廃棄物の処理を業者に委託するときは、書面で委託契約書を交わさなければならないと定められています。
契約書には許可証のコピーを添付し、業務終了から5年間保管することが義務付けられています。また、契約は「排出事業者と収集運搬業者」「排出事業者と処分業者」で直接2者契約を結ぶこととされているため、それぞれの業者と直接契約が必要です。
マニフェストの交付
産業廃棄物の処理を処理業者に委託する場合は、マニフェストの交付が義務付けられています。
マニフェストとは産業廃棄物管理票のことで、廃棄物が正しく処理されたかどうかを確認するための書類です。産業廃棄物の種類や量などが記載され、処理が完了するまで廃棄物と一緒に移動し、どのように処分されたのかが1枚でわかるようになっています。
マニフェストは電子登録または紙で交付し、5年間保存されます。排出事業者はマニフェストを通し、期日内に正しく廃棄物が処理できていることを確認しなければなりません。
産業廃棄物排出事業者の義務違反と罰則
産業廃棄物処理法では、委託基準などを守らなかった場合や産業廃棄物を適正に処理しなかった場合の罰則も定められています。
違反となる行為や罰則について、詳しく見ていきましょう。
委託基準違反
委託基準を満たしていない業者に委託してしまった場合は委託基準違反となり、罰則として懲役刑や罰金刑が科せられる場合があります。
委託基準違反に当てはまる事例は、以下のとおりです。
- 委託契約書が正しく交わされていない
- マニフェストの適切な交付や保存がなされていない
- 許可を受けていない業者に処理を委託した など
産業廃棄物の処理を他者に委託した場合であっても、廃棄物処理の責任は排出事業者にある点に注意しなければなりません。違反を犯した処理業者も処罰されますが、産業廃棄物排出事業者も対象となるため、処理を委託するときは慎重に業者選定をおこないましょう。
注意義務違反
注意義務とは、産業廃棄物の発生から最終処分までの一連の処理が不適正におこなわれないよう、必要な措置を講ずることや法令にしたがって廃棄物を処理することです。具体的には、以下のケースが当てはまります。
- 著しく安い価格で処理を委託した
- 適正処理がなされていないかもしれない可能性を見過ごした
- マニフェストの不確認 など
例えば、適正な対価が支払われていない場合や適正処理ができないことを看過してしまった場合は、廃棄物処理法の第19条の6第2号における注意義務違反として措置命令が下される場合があります。
産業廃棄物の処理過程においても排出事業者の責任でしっかり確認をおこない、正しく処理または管理しなければなりません。
罰則
廃棄物処理法には、処理業者だけでなく排出事業者の違反についても罰則が設けられています。罰則が科せられる事例は、以下のとおりです。
- 委託基準違反
- マニフェスト交付義務違反
- 記載義務違反
- 虚偽記載
- 電子管理票虚偽登録
- 措置命令違反 など
たとえ処理の委託先が違反を犯した場合であっても、排出事業者の責任を問われ措置命令などが下される場合があります。委託基準違反や措置命令違反は最大で5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金またはこの併科と、重い罰則が科せられます。
産業廃棄物排出事業者のまとめ
産業廃棄物排出事業者とは、事業活動にともなって廃棄物を排出する事業者のことです。廃棄物処理法には、排出事業者の責任において正しく廃棄物を管理し、適正な方法で処分しなければならないと定められています。
産業廃棄物の処理を委託する場合は、以下の3点に注意しましょう。
- 適正業者の選定
- 委託契約書の締結
- マニフェストの交付
処理を委託した場合でも、責任は排出事業者にあります。適正に処理されているかどうかをきちんと確認し、マニフェストを通して処理が完了するまで責任を持って管理しましょう。
委託基準に違反したり注意義務を怠ったりした場合は、罰則が課せられる場合があります。処理業者だけでなく処理を委託した排出事業者の責任も問われるので注意してください。
産業廃棄物の処分についてお困りであれば、山本清掃へご相談ください。山本清掃は、環境省が推奨する「優良認定事業者」の認定を受けています。
この記事を書いた人
山本 智也代表取締役
資格:京都3Rカウンセラー・廃棄物処理施設技術管理者
廃棄物の収集運搬や選別、営業、経営戦略室を経て代表取締役に就任。
不確実で複雑な業界だからこそ、わかりやすくをモットーにあなたのお役に立てる情報をお届けします。