産業廃棄物を効率よく収集運搬できる「積替保管」とは
目次
産業廃棄物を処理するための工程や方法には、さまざまな種類があります。産業廃棄物を処理する際の工程の一つが積替保管です。本記事では積替保管に関する情報を収集している方に向けて、産業廃棄物の積替保管の特徴などをくわしく解説します。
積替保管のメリットや利用する際に注意すべきポイントなども紹介しているので、産業廃棄物の積替保管への取り組みを検討している方は、ぜひ役立ててください。
積替保管とは
積替保管とは産業廃棄物を一時保管する、もしくは積み替えするなどの工程を指します。産業廃棄物の処理は主に、直行と積替保管の2つの方法に分けられます。
直行の場合は産業廃棄物を排出した事業場から中間処理施設を経て、最終処分場に移されるのが基本です。
一方で積替保管の場合は、産業廃棄物の排出事業場から一時保管を行う施設を経て、処分場に運搬されます。
直行と積替保管の違いは、産業廃棄物が一時保管施設を経由するかどうかによります。
積替保管を活用するメリットとは
積替保管による収集運搬を選択した場合、一時保管施設でいったん保管されるため、かえって手間や時間がかかるのではないかと考える方もいるかもしれません。しかし積替保管は産業廃棄物の収集運搬を行う上で、さまざまなメリットが得られます。
例えば運搬の効率をアップさせることが可能です。運搬車両の最大積載量まで載せられるため、一度に大量の産業廃棄物を収集運搬できます。
直行の場合、さまざまな品目の産業廃棄物を複数回に分けて運ぶ必要があるので、収集運搬にかかるコストは高くなりやすいです。一方で積替保管なら効率よく運搬できるので、燃料費などのコストを抑えることができます。
また処分場までの長距離を行ったり来たりする必要がないので、排気ガスの発生を抑制でき、環境に配慮した収集運搬を行えます。
積替保管を利用する際の注意点とは
積替保管を活用した場合、さまざまなメリットを得られますが、考慮しておきたい注意点もあります。
許可の有無を確認
都道府県などから収集運搬業の許可を受けている業者だけが、積替保管を行えます。許可を得ずに収集運搬業を行えば違法になります。積替保管業者への委託を検討している事業者は、収集運搬業の許可を得ている運搬業者を選ぶことが重要です。
運搬業者を選ぶ際は、収集運搬業の許可証を確認しておくことをおすすめします。許可証を確認する際は、「積替・保管を含む」と記載されているかどうかをチェックしましょう。
最終処分までの流れを把握しておく
産業廃棄物を排出した事業者は、業者に依頼後も適切に処理が行われたのかを確認する義務があります。処理を業者に依頼する前に、産業廃棄物が最終処分されるまでの流れを把握しておきましょう。
直行の場合と積替保管を利用した場合の流れを解説します。
・直行
産業廃棄物は、排出した事業者から収集運搬会社に渡り、中間処理会社を経て、最終処分場に収集運搬されます。
・積替保管
排出事業者から委託を受けた一時収集運搬業者が積替保管施設へ産業廃棄物を運搬します。次に、二次収集運搬業者が中間処理会社から最終処分場に産業廃棄物の収集運搬を行います。
委任契約の締結を忘れない
産業廃棄物の処理を委託する場合は、委託した収集運搬業者と委託契約を締結しなければなりません。直行の場合、収集運搬業者と委託契約するだけですみますが、積替保管を行う場合は、収集運搬業者以外の会社とも委託契約を結ぶことが義務付けられています。
積替保管施設を経て処分場に産業廃棄物を収集運搬する場合は、一次収集運搬会社の他に、積替保管を行う会社や積替保管施設から最終処分場まで収集運搬する業者とも委託契約を結ぶ必要があります。
なぜなら廃棄物処理法で、委託会社との二者間契約が定められているからです。
一次収集運搬業者と二次収集運搬業者は異なる場合がほとんどのため、それぞれの業者と委託契約を締結しておかなければなりません。委託契約書を作成する際は、積替保管の利用が分かるように記載しておきましょう。
マニフェストの取り扱いに気を付ける
産業廃棄物の収集運搬に積替保管を利用するかどうかによって、使用すべきマニフェスト伝票の種類が変わってきます。
直行の場合は7枚複写になっている伝票を使用します。複写の1枚は、産業廃棄物を排出した事業者が控えとして保管しておきましょう。残りの6枚は、収集運搬業者や処分会社の控えもしくは排出事業者へ返送されます。
一方で積替保管の場合、8枚複写になっている伝票を使わなければなりません。排出事業者は1枚保管しておき、残りは収集運搬・積替保管に携わる業者や処分会社の控えと、排出事業者への返送用に使用されます。
まとめ
産業廃棄物は直行による収集運搬と、積替保管施設を経由する、いずれかの方法によって処理されます。積替保管を利用した場合、運搬の効率アップやコストの削減などのメリットが得られます。
ただし積替保管は、都道府県などからの収集運搬業の許可が必要不可欠です。産業廃棄物を処理する場合は、収集運搬業の許可を得ている業者かどうかを確認しておくことが大切です。
また積替保管の場合、一次・二次収集運搬業者との委託契約を交わすことも忘れないようにしましょう。
この記事を書いた人

山本 智也代表取締役
資格:京都3Rカウンセラー・廃棄物処理施設技術管理者
廃棄物の収集運搬や選別、営業、経営戦略室を経て代表取締役に就任。
不確実で複雑な業界だからこそ、わかりやすくをモットーにあなたのお役に立てる情報をお届けします。