産業廃棄物の移動が違反になるケースは?実例に基づいた不適正事例も紹介
目次

産業廃棄物を移動させる方法は、自社で移動させたり委託業者を利用したりする方法があります。しかし、産業廃棄物の移動をする場合、産業廃棄物収集運搬許可を取得することが必要です。
本記事では、産業廃棄物を移動させる際に注意することや不適正事例などを紹介します。産業廃棄物を移動させる際の注意点を抑えて産業廃棄物を移動する際は確認しておきましょう。
産業廃棄物を移動させるのは違法?
産業廃棄物を同一法人の工場間に移動させることは違法ではありません。しかし、産業廃棄物を自社で移動させる場合と委託業者を利用する場合では、それぞれ注意点があります。そこで、どのような注意点があるのかについてそれぞれ解説します。
自社で移動する場合
産業廃棄物を自社で移動する場合は、産業廃棄物の運搬基準を守る必要があります。産業廃棄物の主な運搬基準は、車両の表示と備え付け書面の2つです。
車両の表示として、「産業廃棄物の収集」または「産業廃棄物の運搬」に利用する車両であること、氏名または名称を車両の両面側に表示します。
備え付ける書面には、氏名または名称と住所、運搬する産業廃棄物の種類と量、産業廃棄物の積み込みをした日時と事業所の名称、住所、連絡先、産業廃棄物の移動先の事業所の名称、住所、連絡先などを記入する必要があります。
出典:環境省「運搬車に係る表示義務及び書面曽根付け義務の概要」(参照:2022-02-15)
委託して移動する場合
収集運搬業者に委託をして産業廃棄物の移動をする場合は、下記の委託基準を守る必要があります。
産業廃棄物を運搬する際に、公道を通る場合は委託基準が適用されるため、委託者側がマニフェストを交付することが必要です。マニフェストに誤った記載をしてしまった場合、産業廃棄物の排出事業者側が罰則の対象となります。マニフェストを発行する際は見落としなどがないよう確認しましょう。
また、自社の工場から自社の廃棄物処理場までの移動のみを委託するなど、通常のマニフェストと異なる運用には適切な対応ができない運搬業者もあります。運搬業者に委託する際には、変則的なマニフェストにも対応のできる運搬業者に委託することがポイントです。
出典:大阪府「産業廃棄物の処理委託(FAQ)」 (参照:2022-02-15)
産業廃棄物の不適正事例
廃棄物処理法による、「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物または不要物であって、固形状または液状のもの(放射性物質やこれによって汚染されたものを除く)と定義されています。
ここでは、実際にあった廃棄物の不適正事例を紹介します。
形式的な有価物
産業廃棄物であるかどうかの判断は、運搬費用と売却金額を相殺した際に、産業廃棄物を排出した事業者側に収入があるのかどうかが判断基準となります。
不適正事例として、不要になったものを、自ら自動車で運搬し業者に買い取ってもらったというケースがあります。このケースでは、自動車で運搬した燃料費として100円、業者に1円で買い取ってもらいました。
売却価格(1円)に対し、燃料費(100円)を差し引くと99円マイナスとなり排出業者側には収入がないため廃棄物として処理するべきところを、有価物としたため、不適切な処理をしたとみなされました。
出典: 東京都環境局「産業廃棄物の不適正事例」(参照:2022-02-15)
再委託基準違反およびマニフェストの虚偽記載
再委託基準違反およびマニフェストの虚偽記載は罰則の対象です。マニフェストの虚偽記載としての不適切事例を紹介します。
排出事業者に廃プラスチック類の移動と処分の委託を受けた産業廃棄物処理業者が、無許可の処理業者へ再委託をしたケースです。排出事業者から交付されたマニフェストの記載内容には、自ら処理したという虚偽の記載をして事業者に送付していました。
上記の不適正事例の場合、無許可業者への再委託基準違反とマニフェストの虚偽の記載となり、それぞれに罰則が与えられます。無許可業者への再委託基準違反は、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、または併科の罰則、マニフェストの虚偽記載は6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金です。
出典: 東京都環境局「産業廃棄物の不適正事例」(参照:2022-02-15)
無許可業者への委託
無許可業者への委託も罰則の対象となります。例えば、排出業者が自社の産業廃棄物保管所に他事業者の産業廃棄物を受け入れ、自社の産業廃棄物と合わせて運搬と処分を委託し、委託業者は無許可の処理業者だったというケースです。この不適正事例の場合、産業廃棄物の排出業者が違反になります。
他事業者の産業廃棄物の受入をして、無許可で産業廃棄物の収集、運搬または処分を行った場合、5年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金または併料です。
また、自社の産業廃棄物を含めて無許可の処分業者への委託を行ったことは、委託違反となり、5年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金、または併科となります。このケースでは、無許可の処分業者への委託違反と自社の産業廃棄物に対しての委託違反のそれぞれに罰則が与えられます。
出典: 東京都環境局「産業廃棄物の不適正事例」(参照:2022-02-15)
まとめ
産業廃棄物を同一法人の工場間に移動することは違法ではありません。しかし、産業廃棄物処理法に基づき定められた内容を守る必要があります。違反をしてしまうと罰則の対象となるため、マニフェストの記載ミスがないか、委託先の許可があるのかなど入念な確認が必要です。
また、産業廃棄物を自社で移動したり委託したりする際には、それぞれに必要な基準があります。産業廃棄物を移動する方法に応じて正しく移動させましょう。
この記事を書いた人

山本 智也代表取締役
資格:京都3Rカウンセラー・廃棄物処理施設技術管理者
廃棄物の収集運搬や選別、営業、経営戦略室を経て代表取締役に就任。
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