産業廃棄物の処理責任はだれにある?
目次
事業活動で排出される廃棄物は、事業者自身が最後まで責任を持って処理しなければなりません。企業の社会的責任に向けられる監視の目は、厳しさを増しています。知らなかったでは済まされないため、情報をしっかり確認することが重要です。
この記事では「産業廃棄物の処理責任が誰にあるのか」を解説します。責任の内容や知っておくべき注意点にも触れています。産業廃棄物の処理責任について知りたい人は、ぜひ参考にしてください。
【排出事業者責任】産業廃棄物は発生させた人が処理責任を負う
産業廃棄物を発生させた事業者には、排出事業者責任が問われるのをご存じでしょうか。処理責任をまっとうしていないと判断されると、罰則を受ける可能性があるので注意が必要です。
そこでこの章では、産業廃棄物を取り扱う場合に必ず確認しておくべき「廃棄物の処理および清掃に関する法律」(廃棄物処理法)の条文の特に重要なポイントを紹介します。
【第3条第1項】
事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない
【第11条第1項】
事業者は、その産業廃棄物を自ら処理しなければならない
ただし、管轄する自治体の許可を得た業者への委託は可能です。
委託先で不適切な処理が行われたいた場合に考えられる被害とは
前述の通り、産業廃棄物の処理を委託する事業者は、政令で定められた委託基準を順守する必要があります。もし、不正な処理をしたことなどがばれると、委託先だけでなく排出業者も懲役刑や罰金刑が科せられる可能性があるので注意が必要です。
自治体から措置命令が出されると、多額な撤去費用が発生するおそれもあります。社名が公表されて社会的な信用が落ちる場合もあるでしょう。産業廃棄物の処理を委託する場合は、委託基準をきちんと理解しておくことが大切です。
委託基準の主な内容は以下のとおりです。
・許可証を持った処理業者に委託する
・委託契約を締結する
・産業廃棄物管理票(マニフェスト)で管理する
不適正処理・不法投棄の実例を紹介
過去に起きた産業廃棄物の不適正処理や不法投棄の実例を紹介するので、処理責任の内容についても確認しましょう。
不適正処理の事例|食品廃棄物不正転売事件
大手外食チェーン店から委託を受けた産業廃棄物処理業者が、食品廃棄物を不正に転売していた事例です。排出事業者は措置命令の対象となり、社名を公表されたために2016年当時は大きなニュースになりました。
一方、産業廃棄物処理業者はマニフェストの虚偽申告や不正流通の罪に問われ、逮捕者が出ました。
不法投棄の事例|豊島事件
瀬戸内海に浮かぶ香川県豊島に、1978年から1990年にかけて51万立方メートルもの産業廃棄物が不法投棄された事例です。逮捕された業者は許可を得ずに産業廃棄物を不正に収集し、野焼きや不正投棄を続けていました。
1991年に判決が確定して業者の経営陣には懲役刑が科せられ、排出事業者21社は総額約3億8,000万円の解決金を支払いました。
産業廃棄物の処理を委託するときの注意点
ルールを守っていない会社に産業廃棄物の処理を委託すると、自社の処理責任を問われる可能性があります。そこでこの章では、産業廃棄物の処理を委託する場合に確認すべき注意点を3つ解説します。
許可を取得している処理業者を選ぶ
産業廃棄物の処理を業者に委託す際にもっとも注意すべき点は、委託する業者が許可証を持っているかどうかです。業者が委託を受けて産業廃棄物を処理する際には、都道府県知事に 許可申請を出し、許可証が交付してもらう必要があります。
主な許可証の種類は下記の4つです。
・産業廃棄物収集運搬業許可証
・産業廃棄物処分業許可証
・特別管理産業廃棄物収集運搬業許可証
・特別管理産業廃棄物処分業許可証
なお、特別管理産業廃棄物とは、特に有害な産業廃棄物を指すのであわせて覚えておきましょう。
必ず委託契約書を作成・保管する
2つ目の注意点は、口頭ではなく必ず書面かオンラインで委託契約を締結し、契約書は締結から約5年間は保管をしなければならない点です。収集運搬業者や処分業者との間で一対一の契約を締結する際、契約書には許可証の写しを必ず添付するように法律で義務付けられています。
契約書に記載すべき主な項目を以下で紹介します。
委託先 |
記載内容 |
収集運搬委託と処分委託に共通 |
委託契約の有効期限・料金、産業廃棄物の種類・数量、許可を受けた事業の範囲、許可の有効期限など |
収集運搬委託 |
運搬の最終目的地の所在地、積替保管場所の所在地など |
処分委託 |
処分施設の所在地、処分方法、施設の処理能力など |
契約書を保管しておけば、もし委託先で不適切な処理が行われた場合でも内容を確認できるのでリスクヘッジになります。
マニフェストを作成・保管する
3つ目は、必ず産業廃棄物管理票(マニフェスト)を使って管理しなければならない点です。マニフェストの作成および5年間の保管は法律で義務付けられているため、違反すると罰則を受ける可能性があるので注意してください。
マニフェストには紙版と電子版の2種類がありますが、今回は紙版の作成・保管方法について紹介します。
1.排出事業者がマニフェストを作成・交付
2.委託を受けた処理事業者は、処理完了後に該当の管理票を排出事業者に返送
3.最終処分が完了するまで、排出事業者がマニフェストを管理
なお、電子マニフェストは必要な情報を情報処理センターが一元管理するため、事業者が自ら保管する必要はありません。
まとめ
一般廃棄物、産業廃棄物かにかかわらず、事業活動で排出された廃棄物の処理責任は排出した事業者にあります。処理を業者に委託する場合でも、最終的な責任は事業者にあるので注意が必要です。
株式会社山本清掃は、京都市の優良認定を受けた産業廃棄物処理業者です。地球環境保護への取り組みを積極的に推進しており、電子マニフェストにも対応しています。安心・安全に廃棄物の処理を希望される事業者の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
この記事を書いた人

山本 智也代表取締役
資格:京都3Rカウンセラー・廃棄物処理施設技術管理者
廃棄物の収集運搬や選別、営業、経営戦略室を経て代表取締役に就任。
不確実で複雑な業界だからこそ、わかりやすくをモットーにあなたのお役に立てる情報をお届けします。