産業廃棄物のマニフェストとは?書類の内容や種類、流れなどを解説
目次

産業廃棄物の不法投棄をなくし、適切に最終処分するために「マニフェスト」という伝票を用いて産業廃棄物を管理する制度が導入されました。
この制度は不法投棄を未然に防ぎ、地域の環境を保つことにも大きく貢献しています。
産業廃棄物を適切に処理するために、マニフェスト制度は欠かせません。そのために排出事業者は、自社で排出した産業廃棄物が適切に処理されたか、最終処分まで把握しなければならない義務があります。
違反に対しては軽微なものも含め罰則規定があるため、運用にあたっては注意を払わなければなりません。
排出事業者にとって、マニフェストの運用にあたり最低限の知識を押さえておく必要があります。
この記事ではマニフェストについての基本的な知識から罰則規定、紙・電子マニフェストの特徴など、マニフェストを運用する上で知っておきたい基本事項をわかりやすく解説します。
産業廃棄物のマニフェスト制度とは
まずはマニフェスト制度について解説します。
マニフェストとは
「マニフェスト」は産業廃棄物を管理するための専用伝票です。
産業廃棄物を排出する事業者は、ほかの業者にその運搬・処理を委託する際、マニフェストを交付しなければなりません。
マニフェストは産業廃棄物が最終処分されるまで委託業者へと引き渡され、産業廃棄物とともに移動します。マニフェストは産業廃棄物に関する正しい情報を委託業者に伝達するとともに、その処理が適正に行われていることを把握するために必要なものです。
マニフェスト制度とは
上記のマニフェストを用いて産業廃棄物を管理する仕組みを「マニフェスト制度」といい、日本では1990年に運用が開始しました。
排出事業者はマニフェストの交付後90日以内に中間処理が終了したことを、180日以内に最終処分が終了したことを(中間処理が行われない場合は90日以内)、それぞれマニフェストを通して確認する義務があります。
定められた期間以内に廃棄物の処分の確認ができない場合は、都道府県や自治体への報告を行わなければなりません。 また、マニフェストを交付できるのは委託契約を結んだ業者のみとなります。委託契約を結ばずにマニフェストを交付することはできないため注意が必要です。
産業廃棄物のマニフェスト制度の必要性
マニフェスト制度が策定される前は、産業廃棄物の複雑な流れを排出事業者で把握するのは困難でした。産業廃棄物の処理は複数の運搬・処理業者が関わることが多いため、産業廃棄物は複数の業者にまたがって移動し、処分場等で他の産業廃棄物と一緒に処理されるのが一般的です。
混ぜられてしまった産業廃棄物がどこの排出事業者が出したものか、マニフェストのような仕組みがなければ把握するのは難しいでしょう。
このような状況下では、産業廃棄物が不適切に処理されても誰も気づくことができず、記録が残っていなければどこから排出されたかもあいまいになってしまいます。結果的に不法投棄につながってしまうことは容易に想像できるでしょう。
そのため、不法投棄を防ぐとともに産業廃棄物が適切に処理されることを目的としてマニフェスト制度が設けられました。
マニフェスト制度の大きな目的は産業廃棄物の「不法投棄の防止」と「排出事業者責任の明確化」が挙げられます。 この制度では産業廃棄物の適切な管理について、排出事業者が責任を負うものと定めているのも特徴です。
排出事業者は産業廃棄物についての正しい情報を処理業者に伝える義務があり、マニフェストを通じて産業廃棄物を管理する責任を負っているのです。
産業廃棄物のマニフェストに必要な項目
排出事業者がマニフェストに記載しなければならない主な項目を、廃棄物処理法施行規則第8条の21の一部を抜粋・編集して紹介します。1つでも記入漏れがあると正式なマニフェストとして認められないため注意しなければなりません。
- 管理票の交付年月日及び交付番号
- 氏名又は名称及び住所
- 産業廃棄物を排出した事業場の名称及び所在地
- 管理票の交付を担当した者の氏名
- 運搬又は処分を受託した者の住所
- 運搬先の事業場の名称及び所在地、並びに運搬を受託した者が産業廃棄物の積替え又は保管を行う場合には、当該積替え又は保管を行う場所の所在地
- 産業廃棄物の荷姿
- 当該産業廃棄物に係る最終処分を行う場所の所在地
- 当該産業廃棄物に石綿含有産業廃棄物、水銀使用製品産業廃棄物又は水銀含有ばいじん等が含まれる場合は、その数量
マニフェストを申告しない、内容の記入漏れがあった場合
マニフェスト制度に違反した場合は罰則規定が適用されます。 マニフェストを申告しなかった、虚偽の記載を行った、マニフェストの保存義務に違反したなどの場合、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科されます。
また許可・資格のない委託業者に処理を委託してしまった場合は「委託基準違反」としてさらに重い刑罰が科されます。最大で5年以下の懲役又は1000万円以下の罰金又はその両方という罰則規定になっています。
委託業者の不適切行為は、たとえ故意でなかったとしても排出事業者も責任を負わなければなりません。
産業廃棄物のマニフェストの種類
マニフェストには、紙と電子の2種類があります。それぞれの特徴やメリット・デメリットなどについて説明します。
紙マニフェスト
紙マニフェストは、A・B1・B2・C1・C2・D・Eからなる7枚複写の紙の伝票です。
複写式のため排出事業者と委託業者で同じ情報を共有し、処理工程ごとの流れを把握できる仕組みになっています。
紙マニフェストは産業廃棄物と物理的に一緒に移動するため、マニフェストを追っていけば産業廃棄物の流れや状況を把握できるという点では便利です。しかし、産業廃棄物の処理に伴って書類管理が増え、労力や人員がかさんでしまうというデメリットもあります。
電子マニフェスト
電子マニフェストは、マニフェストをオンライン上でやり取りする仕組みです。
紙マニフェストの書類管理の煩雑さを減らし、マニフェストに関わる業務が効率化できるのは大きなメリットと言えるでしょう。
ただし、利用するためには電子マニフェストシステム(JWNET)へ加入しなければなりません。
また、委託業者もこのシステムに加入していなければ電子マニフェストを利用することができないため事前に確認が必要です。
産業廃棄物のマニフェストの流れ
マニフェストの大まかな流れを説明します。 実際は複数の運搬・処理業者が処理に関わることが多いため、マニフェスト伝票の流れは更に複雑にです。電子マニフェストの場合、基本的な流れは同じですが処理の報告が電子上でのやり取りになります。
- 排出事業者はA票を記入して残りを委託業者に引き渡す。
- それぞれの委託業者は処理工程が終了するごとにマニフェストに該当する項目を記入し、運搬・処理の終了の報告(伝票の返送)を行う
- 報告(伝票の返送)を受けた排出事業者はその日付をA票に記入していくことで、産業廃棄物が最後処分されたことを確認する
- 排出事業者は、A票を5年間保管しておく
まとめ
マニフェスト制度は不法投棄を未然に防ぐためになくてはならないものです。 法律で規則が細かく定められている上に、申告漏れや書類の不備などでの罰則規定もあるため、排出事業者は注意を払って運用しなければなりません。
しかし、注意していても起こり得るのが「委託基準違反」という重い罰則規定です。排出事業者にとって、信頼できる優良な委託業者を選ぶことは何よりも大切と言えるでしょう。
山本清掃では京都府を中心とした近畿2府4県で産業廃棄物の収集・運搬を行っています。あらゆる種類の産業廃棄物を適切に処理でき、電子マニフェストにも対応しているため、さまざまなニーズにも柔軟に対応できますので、ぜひご相談ください。
この記事を書いた人

山本 智也代表取締役
資格:京都3Rカウンセラー・廃棄物処理施設技術管理者
廃棄物の収集運搬や選別、営業、経営戦略室を経て代表取締役に就任。
不確実で複雑な業界だからこそ、わかりやすくをモットーにあなたのお役に立てる情報をお届けします。