産業廃棄物に関する資格とは?種類や取得方法を徹底解説
目次
一般的にごみと言えば家庭から出る一般廃棄物(事業系一般廃棄物やし尿も含まれます)の意味で使われますが、これに対して事業活動から出る汚泥や動物の糞尿などの廃棄物は産業廃棄物と呼ばれます。この産業廃棄物の排出量は全国で年間3億8,354万トンもあり、一般廃棄物の排出量の約9倍にもなることはご存じでしょうか。
この膨大な量の産業廃棄物は排出事業者自らが処理するのが原則で、適切に管理するために国家資格である特別管理産業廃棄物管理責任者や廃棄物処理施設技術管理者の設置が義務付けられています。また、自ら処理できない場合は許可を受けた産業廃棄物処理業者に委託できます。そこで、この記事では、産業廃棄物に関する資格の種類や取得方法を解説します。
産業廃棄物を扱うのに必要な資格って?
産業廃棄物は、「廃棄物処理及び清掃に関する法律」(以下、廃棄物処理法)で20種類が定められています。例えば、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類などですが、その中でも「爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有する廃棄物」を特別管理産業廃棄物として規定しています。
産業廃棄物は取扱いに危険が伴うものもあるので、排出事業者は国家資格である特別管理産業廃棄物管理責任者や廃棄物処理施設技術管理者を設置して適切な管理をしなければなりません。排出事業者が産業廃棄物の処理を委託するには、都道府県および政令市から業の許可を受けた業者であることが必要で、これには産業廃棄物収集運搬業、産業廃棄物処分業、特別管理産業廃棄物収集運搬業、特別管理産業廃棄物処分業の4種類があります。以下で詳しく説明します。
特別管理産業廃棄物管理責任者
特別管理産業廃棄物には著しい腐食性を有するpH2.0以下の廃酸やpH12.5以上の廃アルカリ、医療機関などから排出される感染性産業廃棄物などの他、廃PCBや廃石綿などの特定有害廃棄物が含まれます。事業活動で特別管理産業廃棄物が排出される場合、事業者は特別管理産業廃棄物の処理を適切に行わせるため、事業場ごとに特別管理産業廃棄物管理責任者を選任することが義務づけられています。
特別管理産業廃棄物管理責任者の役割は、廃棄物処理法に基づく特別管理産業廃棄物の管理全般を適正に行うため、特別管理産業廃棄物の排出状況の把握、特別管理産業廃棄物処理計画の立案、適正な処理の確保(保管状況の確認、委託業者の選定や適正な委託の実施、マニフェストの交付、保管等)になります。
資格の取得方法と料金
特別管理産業廃棄物管理責任者は、選任要件を満たしている人であることが必要です。選任要件は取扱う廃棄物によって異なり、感染性産業廃棄物の場合は、医師や歯科医師、薬剤師、保健師、看護師などであるか2年以上環境衛生指導員の職にあった者、または大学や高等専門学校で医学、薬学などの課程を修めて卒業した者などとなっています。
感染性産業廃棄物以外の場合の要件は、環境衛生指導員を2年以上経験しているか、または大学の理学・薬学・工学・農学の課程で衛生工学・化学工学を修了し卒業後廃棄物処理の実務を2年以上経験していることなどが必要です。
資格の取得には、これらの選任要件を満たしている人が公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター主催の講習を受講し、講習の最後に行われる試験に合格しなければなりません。講習は1日で、感染性廃棄物の場合のプログラムは廃棄物の関係法規、感染に関する基礎知識、廃棄物の処理と管理、修了試験です。感染性廃棄物以外のプログラムは行政概論、特別管理産業引き物の処理と管理、修了試験となっています。受講料は郵送申込が14,300円、Web申込が13,800円(いずれも税込)です。
廃棄物処理施設技術管理者
廃棄物処理施設技術管理者は、廃棄物処理法21条で一般廃棄物処理施設と産業廃棄物処理施設に設置が義務付けられている国家資格です。施設の維持管理上の基準に係る違反が行われないように、施設を維持管理する事務に従事する他の職員を監督しなければなりません。
具体的には、以下の業務を行います。
- 廃棄物処理施設の維持管理に関する業務を担当
- 廃棄物処理施設の技術上の基準に係る違反が行われないように、維持管理に従事する他の職員を監督
- 施設の維持管理要領の立案(搬入計画、搬入管理、運転体制、保守点検方法、非常時の対処方法等)
- 施設の運転及び運転時の監視、監督
- 施設の定期保守点検及び必要な措置の実施
- 設置者に対する改善事項等についての意見具申等
資格の取得方法と料金
廃棄物処理施設技術管理者の資格を取得するには、一般財団法人日本環境衛生センターが行う廃棄物処理施設技術管理者講習を修了する必要があります。この講習には基礎・管理課程講習と管理課程講習があります。
基礎・管理課程講習は20歳以上ならどなたでも受講できます。受講コースは、ごみ処理施設、し尿・汚泥再生処理施設、産業廃棄物中間処理施設、産業廃棄物焼却施設、最終処分場の5コースと、破砕・リサイクル施設、有機性廃棄物資源化施設の2コースの合計7コースがあります。始めの5コースは基礎課程6日間、管理課程4日間の合計10日間行われ、受講料は121,000円(税込)です。後の2コースは、基礎課程4日間、管理課程4日の合計8日間行われ、受講料は103,400円(税込)です。
一方、管理課程講習を受講する場合は学歴等に応じた実務経験が必要です。例えば、化学部門・水道部門・衛生工学部門の技術士、環境衛生指導員2年以上、4年制大学の衛生工学または化学工学等を履修した卒業者で卒業後廃棄物処理施設実務経験2年以上などです。受講コースは、ごみ処理施設、し尿・汚泥再生処理施設、破砕・リサイクル施設、有機性廃棄物資源化(バイオマス利活用関連)施設、産業廃棄物中間処理施設、産業廃棄物焼却施設、最終処分場の7コースがあり、このうち破砕・リサイクル施設コース、有機性廃棄物資源化(バイオマス利活用関連)施設コースは4日間、それ以外は6日間講習が行われます。受講料は各66,000円(税込)です。
産業廃棄物収集運搬業
産業廃棄物収集運搬業は、都道府県・政令市から許可を受けた業で、特別管理廃棄物を除く産業廃棄物について排出事業者から委託を受けて収集または運搬を行います。業を行うに際して、収集運搬の基準を守ることが義務づけられています。
廃棄物処理法施行令に定める収集運搬基準は具体的には以下のような内容です。
- 産業廃棄物が飛散、流出しないようにすること
- 悪臭、騒音または振動で生活環境の保全上、支障が生じないように必要な措置を講ずること
- 収集または運搬のための施設には、生活環境の保全上支障を生ずるおそれがないように必要な措置を講ずること
- 運搬車、運搬容器および運搬用パイプラインは、飛散、流出、悪臭の漏れがないものであること
- 運搬車両に、産業廃棄物の収集または運搬の用に供する運搬車である旨その他の事項を見やすいように表示し、かつ、必要な書面を備え付けておくこと
資格の取得方法と料金
産業廃棄物収集運搬業の許可を都道府県・政令市から取得する場合、公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター主催の産業廃棄物収集・運搬課程講習を受けなければなりません。
講習は2日間行われ、プログラムは1日目が行政概論、業務管理、2日目が環境概論、安全衛生管理、収集・運搬の講義の後修了試験があります。講習の受講料は新規許可申請の講習は31,000円、Web申込30,500円(いずれも税込)です。
受講に際しては廃棄物処理法第7条及び第14条に定める以下の欠格要件に該当しないことが条件になります。
(1)廃棄物処理法第7条欠落要件
- 成年被後見人、被保佐人、破産者で復権を得ないもの
- 禁錮以上の刑に処せられ、執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
- 廃棄物処理法、浄化槽法、その他生活の環境保全を目的とする法令で政令に定めるものに違反し、罰金に処せられ、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
- 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律および刑法若しくは暴力行為等処罰に関する法律に違反して罰金の刑に処せられ、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
- 一般廃棄物収集運搬・処分業の許可、産業廃棄物収集運搬・処分業の許可、浄化槽法による許可を取り消され、取消しの日から5年を経過しない者
- その業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者
(2)廃棄物処理法第14条欠落要因
- 暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
- 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人が暴力団員に関する規定または廃棄物処理法第7条の欠格要件に該当するもの
- 法人でその役員又は政令で定める使用人のうちに、暴力団員に関する規定または廃棄物処理法第7条の欠格要件に該当する者がいること
- 個人で政令に定める使用人のうちに、暴力団員に関する規定または廃棄物処理法第7条の欠落要件に該当する者がいること
- 暴力団員等がその事業活動を支配する者
上記の欠落要件に該当せず、受講を修了したものは、都道府県・政令市に業の許可を申請できます。申請料は、新規許可申請81,000円、更新許可申請は積替え保管を除く場合42,000円、積替え保管を含む場合73,000円、変更許可申請71,000円です。
産業廃棄物処分業
産業廃棄物処分業は、産業廃棄物を土の中に埋め立て、または海に投棄するなどの最終処分を業として行うことです。これには、最終処分の前段階で、産業廃棄物を物理的、化学的、生物学的な手段で処理し、最終処分しても無害なものに変化させ、あるいはリサイクルするための前処理である中間処理も含まれます。中間処理では、破砕、焼却、脱水、中和、溶融、選別などさまざまな方法が行われます。
最終処分は、産業廃棄物を安定化させ、周囲の環境に影響を及ぼさない状態にすることです。
廃棄物処理法では、環境への影響の度合いによって最終処分の基準を定めています。がれき類や廃プラスチック類などの処分は安定型処分場、特定有害産業廃棄物以外の処分は管理型最終処分場、特定有害産業廃棄物の処分は遮断型最終処分場で行います。
加えて以下のような埋立処分の基準を厳守しなければなりません。主なものを列記します。
- 廃棄物の飛散、流出防止
- 悪臭、騒音又は振動に対する生活環境の保全措置
- 埋立処分のための施設に対する生活環境の保全措置
- 埋立地におけるねずみ、蚊、はえ、害虫等発生防止措置
- 埋立処分終了後、表面を土砂で覆土
- 囲い設置および処分の場所の表示
この他、中間処理の基準も設けられていて、厳守が義務付けられています。
資格の取得方法と料金
産業廃棄物処分業の許可申請には、産業廃棄物の適正な処理を行うために必要な専門的知識と技能を修得するために公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センターが行う産業廃棄物の処分課程の講習会を受講が必要です。講習機関は3日間で、プログラムは、1日目が行政概論、環境概論、2日目が中間処理・再生利用、最終処分、3日目が安全衛生管理、業務管理計測管理で、最後に修了試験があります。受講料は郵送申込が49,200円、Web申込が48,700円(いずれも税込)です。
受講に際しては欠格要件に該当しないことが条件になります(欠格要件は、産業廃棄物収集運搬業の(1)(2)を参照)。
産業廃棄物処分業の許可は、都道府県・政令市が行っています。申請手数料は、新規許可の場合100,000円、更新許可は94,000円、変更許可は92,000円です。申請には計画書の提出などが必要となります。計画書は、施設の所在地、用途地域、取扱う産業廃棄物の種類と処理方法などを記入、施設の周辺写真、施設配置図、排水処理施設の図面、処理工程フロー図、引受先予定事業者などを記載します。なお、都道府県・政令市によって提出書類が異なる場合があります。
特別管理産業廃棄物収集運搬業
廃棄物処理法では、産業廃棄物のうち、爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有するものを特別管理産業廃棄物として区分しています。具体的には、廃油(揮発油類、灯油類など)、著しい腐食性を有するph2.0以下の廃酸、著しい腐食性を有するph12.5以上の廃アルカリ、感染性産業廃棄物(医療機関から排出される産業廃棄物で感染性病原体が含まれているかその恐れがあるもの)、特定有害産業廃棄物(廃PCB、PCB汚染物、指定下水汚泥、鉱さい、廃石綿など)です。
特別管理産業廃棄物は、排出の段階から処理されるまでの間、特に注意して取り扱わなければならないもので、収集運搬に当たっては、特別管理産業廃棄物収集運搬業の許可が必要です。
資格の取得方法と料金
特別管理産業廃棄物収集運搬業の認可取得には、公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センターが実施する特別管理産業廃棄物の収集運搬課程の講習会を受講する必要があります。講習は3日間行われ、プログラムは1日目が行政概論、業務管理、2日目が環境概論、特別管理産業廃棄物概論、安全衛生管理、3日目が収集運搬と修了試験になります。受講料は、郵送申込の場合47,100円、Web申込の場合46,600円(いずれも税込)です。
受講に際しては欠格要件に該当しないことが条件になります(欠格要件は、産業廃棄物収集運搬業の(1)(2)を参照)。
特別管理産業廃棄物収集運搬業の許可は、都道府県・政令市が行っています。申請手数料は、新規許可の場合81,000円、更新許可は74,000円、変更許可は72,000円です。申請には計画書、申請書などの提出が必要となります。計画書には、施設の所在地、用途地域、取扱う特別管理産業廃棄物の種類と処理方法、事業場の概要、計画地周辺の状況、取引内容、資産上の説明、事業開始資金と調達方法、誓約書などを記載します。なお、都道府県・政令市によって提出書類が異なる場合があります。
特別管理産業廃棄物処分業
廃棄物処理法では、産業廃棄物のうち、爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有するものを特別管理産業廃棄物として区分しています。具体的には、廃油(揮発油類、灯油類など)、著しい腐食性を有するph2.0以下の廃酸、著しい腐食性を有するph12.5以上の廃アルカリ、感染性産業廃棄物(医療機関から排出される産業廃棄物で感染性病原体が含まれているかその恐れがあるもの)、特定有害産業廃棄物(廃PCB、PCB汚染物、指定下水汚泥、鉱さい、廃石綿など)です。
特別管理産業廃棄物の処分基準は、中間処理について焼却は構造基準(燃焼温度800℃以上等)に合致した焼却設備を使用する必要があります。また、種類別処分・再生方法として、廃油は焼却、蒸留設備等で再生、廃酸・廃アルカリは中和、焼却、イオン交換設備等で再生、感染性は焼却、溶融、高圧蒸気滅菌、肝炎ウイルスに有効な消毒、他法令に基づく方法、PCB等は焼却、分解、洗浄、廃石綿等は溶融としています。
埋立処分方法は通常の産業廃棄物と同基準だが、埋立場所は囲い設置および処分の場所であることの表示、特定有害産廃の処分は遮断型最終処分場、特定有害産廃以外の処分は管理型最終処分場で行う必要があります。
資格の取得方法と料金
特別管理産業廃棄物収集運搬業の認可取得には、公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センターが実施する特別管理産業廃棄物の収集運搬課程の講習会を受講する必要があります。講習は4日間行われ、プログラムは1日目が行政概論、業務管理、2日目が環境概論、特別管理産業廃棄物概論、安全衛生管理、3日目が収集運搬と修了試験になります。受講料は、郵送申込の場合69,300円、Web申込の場合68,800円(いずれも税込)です。
受講に際しては欠格要件に該当しないことが条件になります(欠格要件は、産業廃棄物収集運搬業の(1)(2)を参照)。
特別管理産業廃棄物処分業の許可は、都道府県・政令市が行っています。申請手数料は、新規許可の場合100,000円、更新許可は95,000円、変更許可は95,000円です。申請には計画書、申請書などの提出が必要となります。計画書は、事業の範囲、施設の種類・設置場所、施設の処理方式、事業の開始に関する資金総額・調達方法、資産調書、事業場の概要、取扱う特別管理廃棄物の種類、取引内容、処理後の処分方法、排出工程フロー図、誓約書などを記載します。なお、都道府県・政令市によって提出書類が異なる場合があります。
まとめ
産業廃棄物の排出事業者は、国家資格である特別管理産業廃棄物管理責任者や廃棄物処理施設技術管理者を設置して、適切に産業廃棄物を管理することが必要です。排出事業者は原則、産業廃棄物を自己処理する責任がありますが、都道府県や政令市から許可された産業廃棄物処理許可業者に処理・処分を委託することが認められています。この許可業者は、取扱う産業廃棄物の種類や業の形態によって、産業廃棄物収集運搬業、産業廃棄物処分業、特別管理産業廃棄物収集運搬業、特別管理産業廃棄物処分業の4種類があり、収集運搬基準や処分基準の厳守を義務付けられています。
山本清掃では産業廃棄物の各種の基準を厳守して安心・安全をモットーに産業廃棄物処理はじめ、廃棄物の処理・リサイクル、ビルメンテナンス(清掃管理、ハウスクリーニング)など幅広く事業を展開しています。廃棄物や清掃のことなら山本清掃にご相談下さい。
この記事を書いた人
山本 智也代表取締役
資格:京都3Rカウンセラー・廃棄物処理施設技術管理者
廃棄物の収集運搬や選別、営業、経営戦略室を経て代表取締役に就任。
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