水銀廃棄物の取扱いが変更になった背景や変更のポイントをわかりやすく解説!
目次
水銀廃棄物に関する法律改正により排出の処理基準が変わったことで、2017年10月から従来の処理方法が変更されています。水銀には「水銀に関する水俣条約」が設けられており、国際的にもさまざまな水銀汚染防止策が推進されてきました。
この記事では、水銀廃棄物の取扱いが変更になった背景や、新たに追加や義務が生じる変更内容について主なポイントを解説します。より細分化された水銀廃棄物を処理する際には、事前に変更内容をチェックしておきましょう。
水銀廃棄物の適正処理の対応が2017年に改正
2017年(平成29年)10月1日から、水銀廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令の改正内容が施行されています。水銀廃棄物の処理方法を、従来よりも細分化して適正処理をするために規制するものです。
世界的に進められている水銀対策の流れの中、国内でも行政や企業、個人が果たす役割分担を行いながら対策を行ってきました。例えば、以前は特に規制のなかった乾電池や蛍光灯などの分別廃棄があります。また、企業に対しては水銀使用量の削減や、水銀を使わない代替品の開発を推進してきました。水銀を含む産業廃棄物は、特別管理産業廃棄物に指定され、責任者の選任や保管基準の遵守、特別管理産業廃棄物処理業者への委託が義務付けられています。
制度改正により、水銀廃棄物は従来の水銀を含む特別管理産業廃棄物に、廃水銀等、水銀使用製品産業廃棄物、水銀含有ばいじん等が新たに定義されました。水銀廃棄物の処理をする際には、それぞれの項目ごとの変更内容に合った方法で適正処理を行うことが求められています。
この改正のポイントは?
一般の排出事業者が水銀廃棄物の処理をする際には、必ず制度の変更内容を確認しなければなりません。ここでは、直接的に関係する改正のポイントを紹介します。
・「水銀使用製品産業廃棄物」と「水銀含有ばいじん等」の定義が新しくなりました。従来の制度では「石綿含有産業廃棄物を含む・含まない」という分類方法でした。制度の改正により「水銀使用製品産業廃棄物を含む・含まない」「水銀含有ばいじん等を含む・含まない」という2つの選択肢が追加されています。
・水銀回収を義務付ける水銀使用製品産業廃棄物の対象や回収方法が変更になりました。
・契約書やマニフェストその他の法定記載事項の追加が義務付けられました。
・産業廃棄物保管基準・運搬基準が新たに追加されました。
「水銀使用製品産業廃棄物」及び「水銀含有ばいじん等」に共通する新たな措置
「水銀使用製品産業廃棄物」及び「水銀含有ばいじん等」に共通して求められている新たな措置です。
求められる項目 |
措置内容 |
業の許可証 |
取り扱う廃棄物に「水銀使用製品産業廃棄物」または「水銀含有ばいじん等」が含まれることが必要 (平成29年10月1日時点で上記の廃棄物を取り扱っている場合、変更許可は不要) |
委託契約書 |
委託する廃棄物の種類に「水銀使用製品産業廃棄物」または「水銀含有ばいじん等」が含まれることを明記する (平成29年10月1日以前に契約締結している場合は、新たな契約変更等は不要) |
マニフェスト |
産業廃棄物の種類欄に「水銀使用製品産業廃棄物」または「水銀含有ばいじん等」が含まれる場合に必要で、含まれる数量を記載する |
廃棄物保管場所の掲示板 |
産業廃棄物の種類欄に「水銀使用製品産業廃棄物」または「水銀含有ばいじん等」が含まれることを明記する |
帳簿 |
「水銀使用製品産業廃棄物」または「水銀含有ばいじん等」に係るものであることを明記する |
水銀使用製品産業廃棄物の対象と追加点
水銀使用製品産業廃棄物の対象は、「新用途水銀使用製品の製造等に関する命令」第2条第1号、または第3号に該当する水銀使用製品のうち、水銀使用表示の有無によらず対象となるもの、水銀が目視で確認できる場合に分けて示されています。
水銀使用表示の有無によらず対象となる水銀使用製品は、水銀電池や蛍光ランプ、気圧計、湿度計、ガラス製温度計、水銀体温計などです。水銀が目視で確認できる場合に対象と水銀使用製品には、医療機器(腹膜透析装置)に組み込まれている傾斜感知用スイッチなどがあります。
制度改正では、水銀使用製品の保管方法や処理の委託、収集や運搬、処分や再生に関する新たな基準が設けられました。これによると、水銀使用製品を保管する場合は、他のものと混ざることを避けるため、仕切りを設けるなどの措置をとることが求められています。また、廃棄処分する場合は「水銀使用製品産業廃棄物」の収集運搬または処分の許可を受けた事業者に委託することなどが必要です。
水銀使用製品産業廃棄物の処分やリサイクルを行う場合には、破砕禁止が義務付けられました。そのため、水銀使用製品を容器に入れる等必要な措置を取らなければなりません。安定型最終処分場への埋め立ても、改正により禁止されました。
水銀含有ばいじん等・水銀を含む特別管理産業廃棄物の対象と必要な対応
水銀含有ばいじん等・水銀を含む特別管理産業廃棄物の対象は、水銀や水銀化合物に汚染されたものです。定められた条件に基づき「水銀含有ばいじん等」と「水銀を含む特別管理産業廃棄物」に分類されています。
水銀含有ばいじん等では、燃え殻、鉱さい、ばいじん、汚泥のうち水銀を15mg/kgを超えて含有するもの、廃酸・廃アルカリのうち水銀を15mg/ℓを超えて含有するものが対象です。一定以上の水銀を含む水銀含有ばいじん等については、処分や再生時に水銀回収義務が設けられています。
水銀含有ばいじん等に関する新たな措置には、水銀含有ばいじん等」の収集運搬または処分の許可を受けた事業者に委託するなど、処理の委託に関するものがあります。また、処分や再生をする場合には、水銀が飛散しないような措置を取ることや、ばい焼設備によりばい焼する(高温に加熱する)などの項目が設けられました。
水銀を含む特別管理産業廃棄物の対象は、鉱さい・ばいじん・汚泥の溶出量が0.005mg/ℓを超えるものや、廃酸・廃アルカリの含有量が0.05mg/ℓを超えるものです。水銀を一定以上含む特別管理産業廃棄物も処分・再生時の回収義務があります。
特別管理産業廃棄物への新たな措置は、水銀や水銀化合物が大気中に飛散しないように必要な措置を取ること、ばい焼設備によりばい焼するか加熱工程により水銀を回収することです。
廃水銀等(特別管理産業廃棄物)の対象と必要な対応
廃水銀等(特別管理産業廃棄物)の対象になるのは、特定施設で生じた廃水銀や廃水銀化合物です。特定施設には、水銀や水銀化合物を含むものを製造・回収する施設や、国・大学の研究所などが含まれます。また、一般廃棄物を除く水銀や廃水銀化合物が含まれるものから回収した排水銀も対象です。
制度改正で新たに必要となった廃水銀等への措置には、保管・積替え、処理の委託、収集運搬、中間処理の項目があります。これにより、保管や積替えをする際には、飛散・流出・揮発を防止するための措置と、高温防止策や腐食防止措置をとることが必要です。処理を委託する場合は、廃水銀等の収集運搬・処分の許可を取得した事業者に委託すること、委託契約書に「廃水銀等」と記載すること、マニフェストの廃棄物の種類の欄に「廃水銀等」と記載することが定められました。
廃水銀等を収集運搬する際には、必ず密閉性や強度の高い損傷しにくい運搬容器に入れなければなりません。また、中間処理で埋立て処分をする場合は、水銀の純度を高めた上で専門の硫化施設で行うことが必要です。最終処分の方法は、固型化した廃水銀等処理物の埋立判定基準の量によって処分場の種類が異なることにも注意しましょう。
まとめ
水銀廃棄物の処理に関する制度は2017年に一部内容が変更されたため、新しい措置や義務事項への対応が必要です。水銀廃棄物は細分化され、新たに「水銀使用製品産業廃棄物」「水銀含有ばいじん等」の項目が設けられました。さらに、それぞれの対象や対応方法が細分化されている点にも注目したいところです。契約書やマニフェストなどへの記載事項なども一つずつ確認して、義務違反のリスクを回避することをおすすめします。
水銀汚染防止策が推進されている昨今では、処理業者の水銀廃棄物への取り扱いには一層の注意が必要です。記事で紹介した水銀使用製品産業廃棄物、水銀含有ばいじん等・水銀を含む特別管理産業廃棄物、廃水銀等(特別管理産業廃棄物)の対象や必要な対応を確認し適正な処理を行うようにしましょう。
この記事を書いた人

山本 智也代表取締役
資格:京都3Rカウンセラー・廃棄物処理施設技術管理者
廃棄物の収集運搬や選別、営業、経営戦略室を経て代表取締役に就任。
不確実で複雑な業界だからこそ、わかりやすくをモットーにあなたのお役に立てる情報をお届けします。