事業系不用品回収は産業廃棄物収集運搬業の許可が必要!取得方法を解説
目次

私たちが生活で使っているものは、工場や農場をはじめさまざまな場所で生産されています。そして、産業が伴う廃棄物の一部は「産業廃棄物」に指定され一般的な廃棄物よりも厳しい条件で処理されます。
産業廃棄物は大量に排出されること、自然環境や人体に有害なものも含まれることなどから、産業廃棄物の収集・運搬などには許可や資格が必要です。
また、不用品回収を行う業者はこうした産業廃棄物収集運搬業の許可を取得することで、事業が拡大できるメリットもあります。
この記事では、産業廃棄物収集運搬業の種類や許可の取得方法などを解説します。
産業廃棄物とは
日常生活で私たちが出しているごみは、正式には「廃棄物」と呼ばれます。
廃棄物は「産業廃棄物」と「一般廃棄物」に分類され、産業廃棄物は事業に伴い生じる廃棄物のうち法令で定められた20種類のことです。
20種類に該当しない廃棄物はすべて「一般廃棄物」に該当し、事業に伴い生じる廃棄物もこれに含まれます。
主な産業廃棄物は、工場や下水処理場などから排出される汚泥や家畜の糞、建築廃材などがあり、有害な化学物質を含んでいるものが多いため慎重に運搬・処分しなければなりません。
また、産業廃棄物は一般廃棄物の8倍近くの量があるとされており、廃棄場所が不足していることや廃棄場所の環境汚染について大きな課題となっています。
例えば、数十年前に廃棄された産業廃棄物に有害な化学物質や薬品が含まれており、長い時間をかけて土壌汚染を続けていることもあるのです。
産業廃棄物に分類されている20種類と具体的な例を以下にまとめました。
区分:あらゆる事業活動に伴うもの
種類 | 具体例 |
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燃え殻 | 石炭がら、コークス灰、重油灰、廃活性炭(不純物が混在すること等により泥状のものは汚泥) 産業廃棄物の焼却残灰・炉内掃出物 |
汚泥 | 工場廃水等処理汚泥、各種製造業の製造工程で生じる泥状物、ベントナイト汚泥等の建設汚泥、生コン残さ、下水道汚泥、浄水場汚泥、洗車場汚泥、建設汚泥等 |
廃油 | 廃潤滑油、廃洗浄油、廃切削油、廃燃料油、廃食用油、廃溶剤(シンナー、アルコール類)、タールピッチ類 |
廃酸 | 廃硫酸、廃塩酸、廃硝酸、廃クロム酸、廃塩化鉄、廃有機酸、写真定着廃液、酸洗浄工程その他の酸性廃液 |
廃アルカリ | 写真現像廃液、廃ソーダ液、金属せっけん廃液等すべてのアルカリ性廃液 |
廃プラスチック類 | 合成樹脂くず、合成繊維くず、合成ゴムくずなど、固形状及び液状のすべての合成高分子系化合物、廃タイヤ(合成ゴム)、廃イオン交換樹脂なども該当 |
ゴムくず | 生ゴム、天然ゴムくず |
金属くず | 切削くず、研磨くず、空缶、スクラップ、鉄鋼または非鉄金属の破片 |
ガラス・コンクリート・陶磁器くず | ガラスくず、耐火レンガくず、陶磁器くず、セメント製造くず、ガラス類(板ガラス等)、廃石膏ボード、モルタルくず、スレートくず、陶磁器くず、製品の製造過程等で生ずるコンクリートくず等 |
鉱さい | 鋳物廃砂、電炉等溶解炉かす、ボタ、不良石炭、粉炭かす等 |
がれき類 | 工作物の新築、改築または除去により生じたコンクリート破片、アスファルト破片その他これらに類する不要物 |
ばいじん | 大気汚染防止法に定めるばい煙発生施設、ダイオキシン類対策特別措置法に定める特定施設または産業廃棄物焼却施設において発生するばいじんであって集じん施設によって集められたもの |
区分:排出する業種が限定されるもの
種類 | 具体例 |
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紙くず | 建設業に係るもの(工作物の新築、改築または除去により生じたもの)、パルプ製造業、製紙業、紙加工品製造業、新聞業、出版業、製本業、印刷物加工業から生ずる紙くず |
木くず | 建設業に係るもの(範囲は紙くずと同じ)、木材・木製品製造業(家具の製造業を含む)、パルプ製造業、輸入木材の卸売業および物品賃貸業から生ずる木材片、おがくず、バーク類等貨物の流通のために使用したパレット等 |
繊維くず | 建設業に係るもの(範囲は紙くずと同じ)、衣服その他繊維製品製造業以外の繊維工業から生ずる木綿くず、羊毛くず等の天然繊維くず |
動物系固形不要物 | と畜場において処分した獣畜、食鳥処理場において処理した食鳥に係る固形状の不要物 |
動植物性残さ | 食料品、医薬品、香料製造業から生ずるあめかす、のりかす、醸造かす、発酵かす、魚および獣のあら等の固形状の不要物 |
動物のふん尿 | 畜産農業から排出される牛、馬、豚、めん羊、にわとり等のふん尿 |
動物の死体 | 畜産農業から排出される牛、馬、豚、めん羊、にわとり等の死体 |
処分するために処理したもの(政令第2条第13号廃棄物) | 以上の産業廃棄物を処分するために処理したもので、上記の産業廃棄物に該当しないもの(例えばコンクリート固型化物) |
産業廃棄物収集運搬業とは
産業廃棄物は先述したとおり廃棄物処理法に基づいて適切に保管、収集・運搬、処理をしなければなりません。
しかし産業廃棄物の処理において、排出事業者が責任を担うことになりますが、保管から収集・運搬、処理までをすべて同一の事業者で行うことは困難です。
そのため排出事業者は産業廃棄物処理業者に収集・運搬、処理を委託することで廃棄物の処理を効率的に適切な処理が可能になります。
産業廃棄物処理業者は、産業廃棄物の収集・運搬やそのままでは有害な産業廃棄物を無害化・処分する資格を持つ事業者です。大きく分けて「収集運搬業」と「処分業」に分けられています。
産業廃棄物収集運搬業許可を取得するとできること
産業廃棄物処理業者のうち、産業廃棄物収集運搬業許可を取得することで「産業廃棄物の運送」業務が行えるようになります。
産業廃棄物は一般的な廃棄物とは異なり有害な化学物質を含んでいる可能性が高いため、廃棄物の取り扱いも一般の運送業者とは明確な基準が設けられています。
産業廃棄物収集運搬業の基準を簡潔に表した内容が以下です。
- 産業廃棄物は飛散や流出を防ぎしっかりと保管すること
- 産業廃棄物を運搬する際は悪臭や騒音、振動などにより生活環境に支障が出ないよう安全に運ぶ
- 産業廃棄物の保管は決められた容量を必ず遵守する
- 運搬車の車体の外側に産業廃棄物の収集運搬車である旨を表示させる
運搬業務の基準のほか、積替えや保管を行うときの基準もそれぞれ設けられています。 不用品回収業者が産業廃棄物収集運搬業許可を取得し事業を拡大するケースが多く、この許可を取得することで以下のサービスを提供することが可能です。
産業廃棄物の回収
産業廃棄物収集運搬業許可を取得すると、ビジネスとして産業廃棄物の回収が可能です。
たとえば町の工場や医療機関から排出される廃油や廃プラスチック、木くず、廃酸などが回収できるほか、私たちの身の回りにはさまざまな産業廃棄物があります。
そのため不用品と並行して産業廃棄物の回収業務を行い、効率的なルートを設定すればコストの削減も可能です。
家電リサイクル法4品目の回収(条件付き)
不用品回収業者が産業廃棄物収集運搬業許可を取得すると、家電リサイクル法で指定されている「家電4品目」の回収ができる点も大きなメリットです。
通常、一般家庭で使われた家電は一般廃棄物として回収されますが、家電4品目に指定されているエアコン、テレビ、冷蔵庫および冷凍庫、洗濯機および衣類乾燥機は一般廃棄物の対象外となります。
家電4品目の回収は、家電リサイクル法により一般廃棄物収集運搬業許可が必要です。
ただし、これには「小売業者又は指定法人若しくは指定法人の委託を受けている」ことが条件となります(家電リサイクル法第49条第1項)。
小売業者とは家電販売店やインターネット販売、通信販売、リサイクルショップ、質屋など幅広い業種が含まれます。
そのため、リサイクルショップや質屋などと提携すれば産業廃棄物に加え家電4品の回収可能です。
不用品回収業者が産業廃棄物収集運搬業許可を取得することは事業と顧客の幅を広げられるでしょう。
産業廃棄物収集運搬業許可の種類
産業廃棄物処理業者は、大きく分けて「収集運搬業」と「処分業」に分けられ以下のように呼ばれています。
- 産業廃棄物収集運搬業
- 産業廃棄物処分業
産業廃棄物処理業者は上の2つをまとめた総称として使われます。
収集運搬業と処分業は別々の許可制度があるため、どちらかの許可を得ただけではもう一方の業務を行えません。
そして、収集運搬業には「積替え・保管を含む」「積替え・保管を含まない」の2種類の許可があることも理解しておきましょう
積替えとはトラックから別のトラックに積み直すような作業を言い、「保管」は指定した場所に産業廃棄物を保管することを指します。
「積替え・保管を含まない」産業廃棄物収集運搬業は、排出事業者で収集を行ってから中間処理施設または最終処分場までのに産業廃棄物を一度も降ろすことなく、直行しなければならない許可です。このとき、ルートを周りながら積み増していくことはできます。
例えば、小さなトラックから大きなトラックに積替えたり、保管場所で一定量まで産業廃棄物を保管しておくことはできませんが、自社のガレージで運搬車輌を一時的に駐車することは問題ありません。
また「積替え・保管を含む」産業廃棄物収集運搬業の場合は、先述した積替えや保管ができる許可です。
積替えや保管を行うことにより効率的な配送ができるようになりますが、適切な処分のための施設や保管場所の確保のほか、事業計画の提出や周辺住民から合意を得るなどさまざまな手間と時間が増える点に注意が必要です。
最初は「積替え・保管を含まない」産業廃棄物収集運搬業で事業を始め、一定の準備が整ったら「積替え・保管を含む」方の許可に変更するのがよいでしょう。
産業廃棄物収集運搬業(積替え・保管なし)許可の取得の流れ
ここでは産業廃棄物収集運搬業(積替え・保管なし)許可の取得方法について解説します。
主な流れは以下の通りです。
- 産業廃棄物処理業の許可申請に関する講習会の受講・修了
- 許可申請
- 審査
- 許可証の発行(審査により許可となった場合)
まずは許可申請するために必要な要件から確認しましょう。
許可申請にあたり満たす必要がある要件
許可を申請する前に、必要な要件を満たしているか確認する必要があります。
要件は主に以下の4つです。
欠格条項に該当しない
「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」第14条第5項第2号に基づいた欠格事項を簡略化し記載しています。以下の1〜13の項目に該当しないか事前に確認しましょう。
- 精神の機能の障害により、廃棄物の処理の業務を適切に行うに当たって必要な認知、判断および意思疎通を適切に行うことができない者
- 破産者で復権を得ない者
- 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
- 以下の法律に係る罪を犯し、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律又は浄化槽法等で許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者(許可を取り消されたのが法人である場合は、当該法人の役員、株主等であった者で、取消しの日から5年を経過しないものを含みます。)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律又は浄化槽法の許可取消しに係る聴聞通知があった日から、その処分を決定するまでの間に廃業の届出をした者で、当該届出の日から5年を経過しないもの
- 上の廃業の届出をした事業者において、聴聞通知の日前60日以内に当該事業者の役員、株主等又は政令使用人(本店、支店の代表者又は廃棄物処理業に係る契約を締結する権限を有する者をいいます。)であった者で、当該届出の日から5年を経過しないもの。
- 廃棄物処理業に関し、不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者
- 暴力団員等(暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者を含みます。)
- 未成年者で、その法定代理人が1~9のいずれかに該当するもの
- 法人で、役員、株主等又は政令使用人のうちに1~9のいずれかに該当する者のあるもの
- 個人で、政令使用人のうちに①~⑨のいずれかに該当する者のあるもの
- 暴力団員等がその事業活動を支配するもの
指定講習会を受講・修了している
許可を申請するには各都道府県および政令市の「公益社団法人産業廃棄物協会」による講習会を受講し、修了していなければなりません。
講習会は新規に許可申請するための講習会、更新するための講習会などがあり、指定の講習会を予約・受講する必要があります。
経理的基礎がある
産業廃棄物の収集運搬を行うにあたり、事業を継続的に行えるかという経営状態も重要です。具体的には「少なくとも債務超過の状態でなく、かつ持続的な経営の見込み又は経営の改善の見込みがある」ことを満たしている必要があります。
収集運搬に利用する車両、容器、駐車場がある
産業廃棄物の収集・運搬には廃棄物が飛散、流出、悪臭の漏洩などしないように適した車両が必要です。また廃棄物が互いに混ざり合わないための容器、車両を停める駐車場などの設備が欠かせません。
許可申請で必要な書類
許可申請で必要な書類は法人と個人とで申請時に必要な書類が一部異なります。
業種形態 | 必要な書類 |
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法人 |
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個人 |
|
申請窓口
申請窓口については各自治体の公式サイトで必ず確認しましょう。
産業廃棄物収集運搬業許可の申請先や手続き内容は自治体によって異なります。
申請の大まかな部分は共通していても、自治体により車両の写真の撮り方や必要書類が異なることもあるほか、許可は廃棄物の収集場所と運ぶ先の処分場の都道府県が異なる場合、両方の都道府県の許可が必要です。
そのため、広域に渡り廃棄物を収集する場合は各自治体に応じた方法で申請書類を用意しなければならない点に注意しましょう。
申請料金
産業廃棄物収集運搬業許可の申請をする際には、受付時に許可申請手数料を支払いましょう。金額はすべての都道府県で一律となっています。廃止・変更届の場合は手数料はかかりません。
種類 | 新規 | 更新 | 変更 |
---|---|---|---|
産業廃棄物収集運搬業 | 81,000円 | 73,000円 | 71,000円 |
産業廃棄特別管理 産業廃棄物収集運 搬業物収集運搬業 |
81,000円 | 74,000円 | 72,000円 |
書類を窓口へ提出すると審査に入ります。
審査期間はおよそ2ヶ月ほどかかると考えておくとよいでしょう。
まとめ
産業廃棄物を収集し運搬するには許可の取得が必要です。許可はいくつかの種類に分かれており、それぞれに応じた手続きをしなければなりません。 しかし、不用品回収業者が産業廃棄物収集運搬業の許可を取得することで事業拡大も可能なため、メリットが多くあります。
許可申請の手順について理解し、慎重に手続きを進めましょう。
株式会社山本清掃は、京都市から優良認定を受けている産業廃棄物処理業者です。収集運搬から中間処分、リサイクルまで一貫した処理ができる点が強みです。信頼できる産業廃棄物処理業者を探している人は、ぜひご利用をご検討ください。
この記事を書いた人

山本 智也代表取締役
資格:京都3Rカウンセラー・廃棄物処理施設技術管理者
廃棄物の収集運搬や選別、営業、経営戦略室を経て代表取締役に就任。
不確実で複雑な業界だからこそ、わかりやすくをモットーにあなたのお役に立てる情報をお届けします。