食品リサイクルループとは
目次
食品リサイクルループという言葉を耳にすることはあるけど、具体的にはどのようなことなのかよくわかっていないという方も多いのではないでしょうか。
そこで、本記事では食品リサイクルループとは何か、その概要や仕組みを解説するとともに、実際に取り組む企業の事例を紹介します。ぜひお役立てください。
食品リサイクルループとは
食品リサイクルループとは、食品リサイクル法に定める再生利用事業計画の取り組みです。食品廃棄物を利用した肥飼料で農畜産物を生産するなど、地域で完結する循環型モデルを指します。
食品工場や店舗で排出された惣菜や野菜くずなどの食品残飯をリサイクルするため、環境に配慮した取り組みとしても知られています。そのため、CSRとして取り組む企業も増えていて、企業ブランドの向上につながるケースもあります。
食品リサイクルループの仕組みを解説
食品リサイクルループの仕組みの全体の流れは、以下のとおりです。
1.畜産農家・耕種農家が食品事業者に対して野菜などの食材を販売する
2.食品事業者から出る野菜くず・惣菜の売れ残りなどを収集運搬事業者が回収する
3.再生登録事業者は、収集運搬事業者によって回収された食品残さで肥料や飼料を作る
4.製造された肥料や飼料が畜産農家・耕種農家に受け渡される
5.畜産農家・耕種農家はその肥料・飼料を用いて家畜や野菜を育てる
上記のことから、食品リサイクルループは農家や事業者、販売者などが連携する循環型モデルであることが分かります。
【事例あり】食品リサイクルループに取り組む企業とは
食品リサイクル法の再生利用事業計画で認定された、食品リサイクルループに取り組む企業と取り組み内容を紹介します。
事例1:富士グリーンフードリサイクル株式会社
富士グリーンフードリサイクル株式会社は、2003年度から家庭系・事業系ごみや食品廃棄物からメタン発酵によるバイオガス発電を行うとともに、メタン発酵液、発酵残さ、剪定枝、苅草、コーヒーかす、茶粕などで堆肥を製造しています。
メタン発酵では廃棄物などを最大40t/日処理し、バイオガスを5,000N㎥/日発生するそうです。このバイオガスでガスタービン発電を行い施設内電力として利用するとともに、余剰バイオガスを隣接工場に3,000N㎥/日販売しています。
堆肥はメタちゃん有機の名称で近隣の野菜農家などに販売し、その肥料で生産された野菜はスーパーで販売される仕組みになっています。
事例2:小田急グループなど
東京都・神奈川県にまたがる小田急電鉄株式会社、小田急商事株式会社、株式会社小田急百貨店の食品関連事業者計28店舗から出る食品、692t/年を有限会社長田サービスなど4社の保冷車によって収集します。
この食品残さは再生利用事業者の株式会社小田急ビルサービスで加水され、液体飼料化されます。その生産量は年間1,038tで、ここで生産された液体飼料は農林漁業者などの株式会社あずみ野エコファーム(長野県)と有限会社亀井畜産(神奈川県)が使用して年間計1,301頭の豚を生産するそうです。
この豚1,301頭から年間65tの豚肉がつくられ、これを食品関連事業者である小田急グループが購入し販売します。
事例3:ユニーグループホールディングス株式会社
ユニーグループホールディングス株式会社は営業所のある1府17県で16件の食品リサイクルループを構築しています。その中から2例を紹介します。
D.I.Dバイオリサイクルでは、一宮市、稲沢市、江南市、豊山町の店舗から出る食品残さを一宮市の生ごみ堆肥化処理場(D.I.D)で堆肥として熟成させ、リサイクル堆肥エコパワーを生産しています。JAグループではこれを使って野菜を生産し、その野菜は店舗で販売される仕組みです。
ブライトピックと山崎製パンの食品リサイクルループでは、千葉県の店舗から出る食品残さをブライトピック千葉溝原工場で安全・良質なエコフィード飼料を製造しています。この飼料で生産した豚をプリマハムが食肉加工品として製造し、山崎製パンがこれを使用して惣菜パンを製造したものを関東地区店舗で販売します。
事例4:イオン株式会社
イオングループは2016年1月にイオン完結型食品リサイクルループをスタートさせました。これはイオングループ内店舗から出た食品残さを堆肥にリサイクルし、イオンの直営農場で農産物を生産してグループ内店舗に供給するクローズド・リサイクルループです。
イオングループの各店舗から出る野菜くずや賞味期限の切れた肉類・パンなど約3,500tを大栄環境株式会社が回収して有機肥料を生産しています。この肥料をイオングループの農業法人イオンアグリ創造株式会社が運営するイオン兵庫三木里脇農場で使用し、キャベツ、ダイコン、ハクサイ、ミニトマトなどを約500t生産、各店舗で販売しています。
事例5:ワタミ株式会社
ワタミ株式会社と外食事業者4社(株式会社セブン&アイ・フードシステムズ、株式会社トリドールホールディングス、株式会社松屋フーズ、リンガーハットジャパン株式会社)は2020年7月、名古屋市内の5社38店舗から出る調理残さなどを飼料化して養鶏場で給餌、鶏卵を生産する食品リサイクルループをスタートさせました。
食品ゴミなどを収集するのは、三和清掃株式会社と株式会社岩田清掃です。保冷車で運搬し、再生利用事業者の中部リサイクル株式会社が配合飼料原料に加工、農林漁業者のサンエッグファーム株式会社の養鶏場で給餌します。
生産された鶏卵は外食事業者が買い戻し、商品として加工して、店舗で販売されているそうです。
まとめ
食品リサイクルループとは、食品リサイクル法に基づいた地域完結の循環型モデルです。店舗などで出る食品残さや売れ残りを肥料や飼料などにリサイクルして、野菜や家畜を生産、店舗に供給する仕組みなどを、国が再生利用事業計画として認定しています。
そのメリットは、食品リサイクルループにより多くの企業や地域が取り組むことで食品ロスが減ることです。また、環境配慮に取り組む企業として評判も上がることが期待されます。
これまでさまざまな企業が食品リサイクルループを構築していて、今後さらにその輪が広がることが予想されています。
株式会社山本清掃では食品リサイクルにも対応しております。スーパー、レストラン、食品工場などから排出される食品残渣(売れ残り、食べ残し、調理くず、等)を回収し、
提携工場にて肥料としてリサイクルいたします。ぜひお気軽にお問い合わせください。
この記事を書いた人

山本 智也代表取締役
資格:京都3Rカウンセラー・廃棄物処理施設技術管理者
廃棄物の収集運搬や選別、営業、経営戦略室を経て代表取締役に就任。
不確実で複雑な業界だからこそ、わかりやすくをモットーにあなたのお役に立てる情報をお届けします。