産業廃棄物処理法の違反事例と罰則について徹底解説
目次
産業廃棄物の処理については法律で明確な方法が定められており、事業活動に伴い生じた廃棄物は、事業者自らが責任持って処理しなくてはいけません。そのため、当然ながら不適切な方法でゴミを廃棄してしまうと、法律違反となり罪に問われてしまいます。
この記事では、産業廃棄物処理法の違反事例と、主な罰則について詳しく解説します。
産業廃棄物の違反事例
産業廃棄物法に違反したことによって、法を犯した本人や会社の経営者が逮捕されたという事件をテレビや新聞などで目にするのも珍しいことではありません。
以下に、産業廃棄物の違反事例を5つ紹介します。
事例①:不法投棄
島根県松江市にあるAホテルの元社長は、建設廃材の処理費用を安くしようと企て、系列会社の元副社長と共謀し、2004年10月から12月にかけて内装工事で出た建築廃材30トンあまりを地下室に投棄させました。
このことにより、同ホテルで硫化水素が発生し、男女8人が気分を悪くし手当てを受けました。
ゴミの不法投棄が社会問題となっている中、不法投棄した者には5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金(法人においては3億円以下の罰金)またはその両方という重い罰が科せられます。
この事例においては、Aホテルの元社長が罪に問われ、松江地裁は、懲役2年4月、執行猶予3年、罰金150万円(求刑・懲役3年、罰金150万円)の有罪判決を言い渡しました。
※出典:エコノハサーチ ニュース(2022-6-29)
http://search.econoha.jp/news/%E6%9D%B1%E6%A8%AA%E3%82%A4%E3%83%B3%E5%85%83%E7%A4%BE%E9%95%B7%E3%82%92%E9%80%AE%E6%8D%95%E3%80%81%E5%BB%83%E6%9D%90%E4%B8%8D%E6%B3%95%E6%8A%95%E6%A3%84%E5%AE%B9%E7%96%91%E3%80%80%E7%A1%AB%E5%8C%96-2/
事例②:再委託基準違反・マニフェスト虚偽記載
産業廃棄物処理業者B社が、排出事業者から廃プラスチック類の運搬と処分の委託を受けました。B社は該当の産業廃棄物を自社で処理せず、無許可の処理業者C社に再委託しました。
B社は排出事業者から交付された産業廃棄物管理票(マニフェスト)に、自ら産廃物を処理したように虚偽の記載をして事業者に送付しました。
まず、無許可業者への再委託は違法行為で、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方の罪が科されます。
加えて、マニフェストの虚偽記載も罪に問われ、6月以下の懲役または 50万円以下の罰金が科されることになります。
※出典:東京都環境局「産業廃棄物の不適正事例」(2022-6-29)
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/resource/industrial_waste/improper_handling/case.html
事例③:事業範囲の無許可変更
廃棄物収集運搬業者A社は、排出事業者から気軽に頼まれ、廃棄物収集運搬業の許可の範囲に含まれない産業廃棄物を運搬しました。
廃棄物収集運搬業者B社は、積替保管の許可がないのに、自社敷地内で積替保管を行いました。
これら2つの事例は、いずれも事業範囲の無許可変更の罪に問われることになりました。
事業範囲の無許可変更の罪を犯した場合は、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、または両方の罪に問われることになります。
※出典:企業法務オンライン「産廃業の違反事例と刑罰」(2022-6-29)
https://www.kigyou-houmu.com/waste-2/
事例④:変更届出義務違反
産業廃棄物処理施設設置業者D社は、排出事業者受託した産業廃棄物を、届出をしている保管場所以外の場所で保管し、保管の場所に関する事項を変更していたのに関わらず、変更の届出を行っていませんでした。
この行為は、廃棄物処理法法第30条第2号の「一般廃棄物処理施設設置者または産業廃棄物処理施設設置者が、施設の変更、廃止、休止、再開、埋立処分の終了の届出をせず、または虚偽の届出をしたとき」に該当することになり、変更届出義務違反として30万円以下の罰金が科されることになります。
※出典:企業法務オンライン「産廃業の違反事例と刑罰」(2022-6-29)
産廃業の違反事例と刑罰
事例⑤:措置命令違反
産業廃棄物処分業者A社は、最終処分場に許容範囲を超えた産業廃棄物を受け入れ山積みにしました。
そのことより生活環境の保全上に支障をきたしたことから、行政は支障の除去の措置命令を行いましたが、A社はそれに従いませんでした。
このような不適正処理が行われた場合は、事例のように都道府県から措置命令(法第19条の5第1項:不法投棄された廃棄物の除去等を講じる命令)を受けることがあります。
措置命令に従わない場合は刑事処分となり、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方の罪が科されることもあります。
※出典:東京都環境局「産業廃棄物の不適正事例」(2022-6-29)
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/resource/industrial_waste/improper_handling/case.html
産業廃棄物処理違反の主な罰則
産業廃棄物処理法に違反すると、実際に罪を犯した違反行為者はもちろん、会社からの命令であった場合には会社も罪に問われることになります。
ここでは、廃棄物処理法違反の主な罰則について解説しているので、参考にしてください。
無許可営業
廃棄物処理法における無許可営業とは、しかるべき許可を得ずに廃棄物の収集や運搬や処分を行うことです。
産業廃棄物処理法(法第25条第1号)では、「許可を受けずに、一般廃棄物の収集、運搬又は処分を業として行ったとき」「許可を受けずに、産業廃棄物の収集、運搬又は処分を業として行ったとき」「許可を受けずに、特別管理産業廃棄物の収集、運搬又は処分を業として行ったとき」には、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方の罪が科されることが記されています。
事業範囲の無許可変更
以下のような行為を行った場合は、産業廃棄物法(法第25条第3号)により、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方の罪が科されることになります。
・不正の手段により、一般廃棄物の収集運搬業、処分業の許可(当該許可の更新を含む)を受けたとき
・不正の手段により、産業廃棄物の収集運搬業、処分業の許可(当該許可の更新を含む)を受けたとき
・不正の手段により、特別管理産業廃棄物の収集運搬業、処分業の許可(当該許可の更新を含む)を受けたとき
委託基準違反
以下のような行為を行ったときには、産業廃棄物法(法第25条第6号)により、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方の罪が科されることになります。
・排出事業者が、一般廃棄物の運搬又は処分を一般廃棄物収集運搬業者・処分業者その他環境省令で定める者以外の者に委託したとき
・排出事業者(中間処理業者を含む)が、産業廃棄物の運搬又は処分を産業廃棄物収集運搬業者・処分業者その他環境省令で定める者以外の者に委託したとき
・排出事業者(中間処理業者を含む)が、特別管理産業廃棄物の運搬又は処分を特別管理産業廃棄物収集運搬業者・処分業者その他環境省令で定める者以外の者に委託したとき
無確認輸出
廃棄物処理法における無確認輸出とは、環境大臣の確認を受けずに一般廃棄物または産業廃棄物を輸出する行為を指します。
無許可輸出をした者は、産業廃棄物法(法第25条第12号)により、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方の罪が科されることになります。
不法投棄・焼却禁止違反
廃棄物を不法投棄した者は、産業廃棄物法(法第25条第14号)により、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方の罪が科されることになります。
廃棄物処理法における焼却禁止違反とは、廃棄物を違法に焼却する行為がこれに該当し、廃棄物を不法投棄したときと同様に、産業廃棄物法(法第25条第15号)によって、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方の罪が科されることになります。
管理票交付義務違反、記載義務違反、虚偽記載
排出事業者(中間処理業者を含む)などが、産業廃棄物の運搬または処分を他人に委託し、当該産業廃棄物を引き渡す際に、次のいずれかに該当したときには、産業廃棄物法(法第27条第1号)により、1年以下の懲役または100万円以下の罰金を科されることになります。
・運搬受託者(処分のみの委託の場合には、処分受託者)に、管理票を交付しなかったとき
・運搬受託者(処分のみの委託の場合には、処分受託者)に、記載すべき事項を記載せずに、管理票を交付したとき
・運搬受託者(処分のみの委託の場合には、処分受託者)に、虚偽の記載をして管理票を交付したとき
まとめ
産業廃棄物の排出事業者は、事業活動に伴い発生した廃棄物を、自らの責任を持って適切に処理しなければいけません。
このことは法律によって定められており、違反した場合はその内容によってはかなり重い罪を科されることになります。
法律に関する知識が不足していたために違反してしまった場合でも、罪を逃れられることはできませんので、くれぐれも廃棄物は慎重に処分しましょう。