産業廃棄物と有価物の違いとは?判断基準をわかりやすく解説
目次
会社を経営する事業者の中には、事業ゴミを捨てる際にそれがただのゴミなのか価値のあるものなのかの判断に困り、どのように処分して良いか分からなくなるという方もたくさんいらっしゃるようです。
この記事では、産業廃棄物と有価物の違いや、それらの判断基準について詳しく解説します。
また、産業廃棄物と有価物の収集運搬方法が異なる理由や、取り扱いに必要となる許可についても紹介。過去に起きた産業廃棄物か有価物かをめぐる判例についても記載しているので、廃棄物の正しい処分方法が分からず情報を探している方は、ぜひ参考にしてください。
産業廃棄物とは?
産業廃棄物とは、事業活動に伴って生じる廃棄物のことで、「占有者が自ら利用し、又は他人に有償で売却することができないために不要になった物」と、昭和52年3月26日に公布された「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部改正について」という国の通知に記されています。
具体的には、廃棄物処理法で規定された20種類の廃棄物のことで、代表的なものを挙げると、燃えがら、汚泥、廃油、廃プラスチック類、ゴムくず、金属くず、がれき類などで、動物の死体や動物のふん尿なども含まれます。
有価物とは?
有価物とは、他人に買い取ってもらえるような価値が残っているもので、所有者にとっては不要であるがまだ使えるもの、一部破損しているが他の一部は利用できるものなどです。
つまり、現役で自分が使っているものや、他人に売れるもののいずれかに当てはまっていれば、それは有価物に分類されます。
産業廃棄物と有価物は収集運搬方法が異なる
収集運搬の点で、産業廃棄物と有価物には明確な線引きが設けられています。
まず、産業廃棄物を収集運搬するためには、都道府県が発行する「廃棄物収集運搬業許可」が必要です。
これに対して有価物を取り扱いする際には、取得が比較的簡単な「古物商許可」があれば良いとされています。
また、一般家庭から排出される廃棄物を、料金を受け取り回収する場合は「一般廃棄物収集運搬業許可」が必要で、古物商許可しか持っていないリサイクルショップや買取業者などは、産業廃棄物も含めて勝手に収集運搬することはできません。
これらの許可を持たずに廃棄物の収集運搬を行うと、5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、もしくはその両方を科せられることになってしまいます。(※)
ただし、実際には廃棄物だとしてもそれを有価物として回収すれば、罪には問われないことになるのです。
例えば、リサイクルショップが回収した廃棄物を店頭で販売したり、廃棄物の一部を材料として仕入れて販売したりした場合は、廃棄物収集運搬業許可も一般廃棄物収集運搬業許可も不要となります。
※出典:一般法人日本リサイクル業IT支援協会「廃棄物と有価物、どう見分けるべき?定義や判例から考えるボーダーライン」(2022-6-20)https://www.jrits.or.jp/2r-info/2181
産業廃棄物と有価物の判断基準
前述した昭和52年3月26日に公布された「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部改正について」には、「占有者の意思、その性状等を総合的に勘案すべきものであって、排出された時点で客観的に廃棄物として観念できるものではない」との考え方が提示されています。
これは「総合判断説」と呼ばれるものです。
それ以前は、廃棄物は「排出実態等からみて客観的に不要物として把握することができるもの」として判断されていたため、現在では廃棄物と有価物のボーダーラインがより難しくなりました。
そのため、「総合判断説」には5つの判断基準が設定されています。
「総合判断説」の5つのポイント
総合判断説には、「物の性状」「排出の状況」「通常の取扱い形態」「取引価格の有無」「占有者の意思」の5つの判断基準が設定されています。
5つの判断基準のポイントをまとめたものが以下の表です。
判断項目 |
具体的なポイント |
物の性状 |
品質が利用用途に合っていて、飛散や流出、悪臭等がない |
排出の状況 |
計画的に排出されていて、適切な保管や品質管理がなされている |
通常の取扱い形態 |
製品として市場が成立している |
取引価格の有無 |
受け取る側に対して有償で引き渡しされている |
占有者の意思 |
占有者に適切な利用、または他人に有償で引き渡す意思がある |
※出典:一般法人日本リサイクル業IT支援協会「廃棄物と有価物、どう見分けるべき?定義や判例から考えるボーダーライン」(2022-6-20)https://www.jrits.or.jp/2r-info/2181
産業廃棄物か有価物の判断は、これら5つの要素を総合的に考慮し判断されます。
そのため、4つの基準を完璧に満たしていても、廃棄物だと判断されることもあり、具体的な要件を満たしていないと思われても、有価物と認められるケースがあるのが現実です。
産業廃棄物か有価物かをめぐる判例「おから事件」
産業廃棄物か有価物かどうかは、「総合判断説」の5つの要素から総合的に判断されるため、基準があっても明確な答えを出しにくいのが特徴です。
ここでは、産業廃棄物か有価物かをめぐる判例で最も有名な事件である「おから事件」の概要と判決結果を紹介します。
以下が、おから事件の概要です。
豆腐を作るときには、大量のしぼりかすである「おから」が排出されますが、そのおからを許可なくお金をもらい回収していて業者が、検挙された事件がありました。
産業廃棄物収集運搬業および処理業の無許可営業に当たることが、検挙の理由でした。
この検挙に対して業者側は、おからはあくまでも飼料や肥料として一般的に使用されている資源であって、加えて産業廃棄物許可の例外に当たる「専ら物」であると主張しましたが、結果的には最高裁がおからは廃棄物である判断。業者は罪に問われることになりました。
この事件のポイントは、総合判断説によって有償取引されていたおからが廃棄物とされたことです。
また、不法投棄による危険性を考慮すれば、この結果は適正だったと判断できます。
まとめ
産業廃棄物は、一見してゴミだと分かるものが多いことに対して、有価物である判断は困難なケースがよくあります。
産業廃棄物を収集運搬するには都道府県が発行する「廃棄物収集運搬業許可」が必要で、それを持たない業者が有価物などだと偽って収集運搬を行うと、懲役刑や罰金刑などの罪に問われることになります。
そのため、廃棄物を処理するときは法令違反にならないよう気を付けなければいけません。
この記事を書いた人
山本 智也代表取締役
資格:京都3Rカウンセラー・廃棄物処理施設技術管理者
廃棄物の収集運搬や選別、営業、経営戦略室を経て代表取締役に就任。
不確実で複雑な業界だからこそ、わかりやすくをモットーにあなたのお役に立てる情報をお届けします。