食品リサイクルの成功事例を紹介
目次
食品リサイクルの必要性
飢餓で亡くなる子どもの多い地域もある一方、先進国では食品の売れ残りや食べ残しなどの食品ロスも問題視されています。環境への悪影響も懸念されている問題です。状況に鑑みて2000年には、食品廃棄物を減らすため、肥料や飼料への再利用を目的とした食品リサイクル法が制定されました。※食品リサイクル法では業種別に目標を定め、食品循環資源や再生利用を推進しています。
※環境省. 「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律の概要」. https://www.env.go.jp/recycle/food/01_about.html, (参照 2021-10-10)
年間多くの食品廃棄物が発生している
環境省によると、平成30年度の食品廃棄物の発生量は約2,531万トンでした。発生量のうち、まだ食べられる食品の廃棄は約600万トンと推計されます。※
※環境省. 「我が国の食品廃棄物等及び食品ロスの発生量の推計値(平成30年度)の公表について」. http://www.env.go.jp/press/109519.html, (2021-04-27)
食品ロス量は、2012年の624万トンよりも約24万トン減少しています。しかし2030年の削減目標は273万トンで、食品リサイクルが進んでいるとは言えない状況です。
平成30年度の食品ロスの約50%は、家庭から出た食品廃棄物でした。事業による食品ロスも2012年からほとんど減少しておらず、大量の食品廃棄物が発生していることが問題視されています。
※農林水産省. 「⾷品ロス量の推移(平成24〜30年度)」. https://www.maff.go.jp/j/press/shokusan/kankyoi/attach/pdf/210427-4.pdf, (2021-04-28)
食品リサイクルの現状
2000年に食品リサイクル法ができ、廃棄される食品の再利用が推進されています。
しかし、平成30年度の食品廃棄物のリサイクル率は、食品産業全体で91%でした。平成24年度の目標では95%を目指していたため、目標よりも低い数値です。
特に、外食産業は食品リサイクル率が42%と、他の業種と比べて低い割合を示しています。食品製造業とは異なり、外食産業は仕入れと売上のバランスを図るのが難しいため、食品リサイクルが進みにくいことが課題です。
農林水産省. 「令和元年度報告食品リサイクル法に基づく定期報告の結果について」. https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syokuhin/s_houkoku/kekka/attach/pdf/gaiyou-57.pdf, (参照 2021-10-10)
食品リサイクルの手法
食品リサイクル法の施行により、次の優先順位で食品廃棄物を減らす努力を行っています。
- 発生抑制
- リサイクル
- 熱回収
- 減量処理後に処分
上記のうちリサイクルの段階では、食品廃棄物を以下の手法で再利用しています。
- 食品廃棄物を飼料化して畜産業で再利用する
- 食品廃棄物で肥料を作って農家で再利用する
- 油脂への利用
- メタン利用
家庭から出る食品廃棄物のリサイクル手法には、家庭用生ごみ処理機で減量したり、肥料化したりする方法があります。
食品リサイクルの成功事例
前述のとおり、特に外食産業では食品リサイクル率が低いことや、産業全体の目標に達していないことが課題です。
しかし、企業によっては食品リサイクルに成功しているケースもあります。食品リサイクルに成功した例を5つ紹介します。
株式会社平井料理システム
1984年創業の株式会社平井料理システムは、四国・中国地方に飲食店を運営しています。
飲食店で発生する食べ残しに対し、自社で保管し集積。食品廃棄物を飼料化・肥料化し、再利用品を用いて野菜や肉を育てて店舗で出す食品材料へと循環させました。
集積拠点の管理と食品廃棄物の運搬を自社で行って、飼料・肥料として利用してもらえる酪農家・農家の存在を活用した地産循環型リサイクルです。
また、店舗で実際に食品材料を扱う社員・従業員への教育も徹底し、食品廃棄物の処理に対する意識を高めています。
株式会社アレフ
びっくりドンキーで知られる株式会社アレフも、食品リサイクルで成功した1例です。
株式会社アレフでは1997年に生ごみ処理機を店舗に導入し、食品廃棄物を減らす取り組みを始めました。2020年9月時点で、生ごみ処理機の導入数は89台。農場に協力してもらい、肥料として自家利用あるいは園芸肥料として販売しています。※
また、大型商業施設で発生した食品廃棄物を回収し、飼料化・肥料化・メタンガス化してリサイクルしています。
全国チェーンならではの手広さで、自社だけでなく施設全体の食品廃棄物をリサイクルする取り組みが成功の理由です。
※株式会社アレフ. 「食品廃棄物削減の取り組み」. https://www.aleph-inc.co.jp/csr/reduceingfoodwaste/, (参照 2021-10-10)
株式会社松屋フーズ
株式会社松屋フーズでは、約600店舗から発生した食品廃棄物を自社で回収。静岡県にある自社堆肥場で肥料化しています。
食品廃棄物の回収・運搬・肥料化をすべて、自社で行っていることが特徴です。2018年度の食品リサイクル率は81.4%と、外食産業全体の約2倍の再生利用率を達成しました。※
※松屋フーズ. 「松屋フーズの取り組み」. https://www.matsuyafoods.co.jp/company/future/index.html, (参照 2021-10-10)
肥料化だけでなく、店舗用機器や洗剤類容器のリユースを推進し、廃棄物の削減に取り組んでいます。
株式会社吉野家ホールディングス
株式会社吉野家ホールディングスでは、工場での食材加工による食品廃棄物や食品ロスになりにくい在庫管理を徹底しています。
工場の加工段階で出た規格外品は、ハンバーグやドレッシングの具材として使用して食品廃棄物を削減。葉物野菜の外葉は飼料化し、野菜の芯は生ごみ処理機で減量しています。
さらに店舗では、仕入れ量は自動発注システムで販売数を予測し、食材の仕込みは1時間ごとの販売数から予測して行います。外注産業の課題である仕入れ・仕込みと売り上げのアンバランスが解消され、食品廃棄物を減らせることが特徴です。
また、牛丼を作るときに発生する牛脂は、全国店舗から回収して飼料化しています。回収量は2027年度で年間3,447トン。結果、食品リサイクル率は64.1%と高い割合を達成しています。※
※吉野家ホールディングス. 「食べ物を廃棄しない工夫牛丼の牛脂を100%リサイクル」. https://www.yoshinoya-holdings.com/csr/compliance/society/topics.html, (参照 2021-10-10)
ワタミ株式会社
ワタミ株式会社では、食品リサイクル法に基づいた循環型再生事業促進に取り組んでいます。
調理くずなど、従来は食品廃棄物として処分されていた食品を回収し名古屋リサイクルセンターへ運搬。配合飼料メーカーによって採卵鶏用の飼料を作って、マヨネーズに加工し、ワタミの宅食やワタミ手作り厨房中京センターで弁当の材料にしています。
それぞれの分野のスペシャリストである他社と協力し、食品循環資源の推進を行っています。
まとめ
日本では年間2,500万トン以上の食品廃棄物が発生し、そのうちまだ食べられる食品の廃棄は約600万トンです。大量の食品廃棄物が発生していることが問題視され、2000年に食品リサイクル法が制定されました。
しかし、外食産業の平成30年度の食品リサイクル率は42%にとどまります。全体でも目標には到達していません。
食品リサイクルの推進にはまだまだ課題も残っていますが、中には導入に成功している事例もあります。自社内で循環資源として再利用するだけでなく、他社と協力して食品廃棄物をリサイクルしていくことが、成功のポイントです。
この記事を書いた人
山本 智也代表取締役
資格:京都3Rカウンセラー・廃棄物処理施設技術管理者
廃棄物の収集運搬や選別、営業、経営戦略室を経て代表取締役に就任。
不確実で複雑な業界だからこそ、わかりやすくをモットーにあなたのお役に立てる情報をお届けします。